子供の「なぜ?」に答える食育...キホンの栄養のお話

赤・黄・緑で解説! 子供に教えたい栄養の役割

年長さんや小学生になると、食べ物の役割が気になってくる子供も多いようです。私は小さい頃から「こんにゃくを食べるとお腹の掃除になる」「ワカメを食べると髪が黒くなる」などと聞いていました。信憑性はさておいて、それらの話は完全に頭にインプットされていて、一生忘れる事はないと思います。記憶力のよい子供達に、もっと食べ物の役割について語ってみましょう。

私は栄養士ですので、日頃から栄養の役割を分かりやすく説明するよう心がけていますが、小さな子供が相手となると勝手が違います。今回は、子供に食物の役割を聞かれた時の答え方について書いてみます。

学校など教育の現場では、食品を赤、黄、緑に3区分した食育が行われているようですので、3色食品群を基本にして説明します。それぞれに違う役割があるので、3色全ての食品グループをバランスよく食べることが目標です。

赤の食べ物 【主菜】:「どんどん成長するために必要だよ」

■主菜になる食品

肉、魚、チーズ、ヨーグルト、牛乳、豆、豆腐、豆乳、卵など

①.png■子供向けの栄養の解説
「しっかり食べると、ぐーんと体が大きくなる」「歯や骨が丈夫になる」「肌や髪の毛もキレイになる」

■赤の食べ物でよくある質問
Q.「お肉(または魚、乳製品、豆)を食べるとどうなるの?」
→A.「大きくなれるし、強くなるよ」「丈夫な歯になるよ!」
そのときの子供の興味に合わせて、筋肉が大きくなる、髪の毛が丈夫になるなど、バリエーションをつけるとよいと思います。人の体は約2割がたんぱく質、6~7割は水分からできています。たんぱく質は、筋肉・内臓・皮膚・ホルモン・爪・毛髪など、体のいろいろな部分を構成するとても大切な栄養素です

Q.「骨が強くなる食べ物は何?」
→A.「ヨーグルトやチーズなどの乳製品だよ。豆腐もいいね。」
乳製品や豆腐はカルシウムが多く、マグネシウムなどのカルシウムを使うために必要な栄養素が含まれているので、骨の成長に役立ちます。乳製品と骨については、色々な意見があるようですが、幼稚園児・小学1年生は一般論で答えてよいと思います。ブロッコリーや青梗菜などもカルシウムを含みますが、緑の食べ物と白い骨は連想しにくいようです。

Q.「なんでチーズ(牛乳、豆腐)が骨になるの?」
→A.「チーズはね、お腹の中で白いパウダーみたいになるの。それが○○ちゃんの骨に入っていくんだよ。」
この年代の子供達は、肉や魚はそのまま人間の体の肉になる、というような単純なイメージを持っています。

Q.「お肉を食べれば、魚は食べなくていい?(またはその逆の質問)」
→A.「お肉は体が元気になって、魚は頭も元気になるからどちらも大切よ」
肉には鉄分が多めなので、酸素を体中に送るのに役立ち、貧血防止や元気アップに役立ちます。魚、特にマグロ、サバ、イワシ、サーモンなどの場合は、オメガ3脂肪酸(DHA)が多いので脳の発達や心の安定にもつながると考えられています。

Q.「なぜ豆を食べても体が大きくなるの?肉じゃないのに?」
→A. 「人の体ってすごいんだよ。お肉でも、豆でも大きくなれるんだよ。馬は草ばかり、ライオンはお肉ばかり食べてるけど、人はどっちでも大丈夫なんだよ。」
これも子供が連想するのが少し難しいケース。たんぱく質が分解されてアミノ酸になってしまえば、もともとはどんな食物だったのかあまり関係ないのですが、簡単な説明が思いつかなかったので、質問された時にちょっと話をそらしました。動物性たんぱく質でも植物性たんぱく質のどちらでも大丈夫というイメージを伝えればよいのではないかと思います。

Q.「栄養ってなあに?」
→A.「栄養は食べ物や飲み物に入っている物で、○○ちゃんが大きくなったり、元気に遊んだり、病気にならないために大切な物だよ」
栄養という言葉の概念が難しければ「物」という言葉を使うのもよいと思います。例えば「元気になる栄養が多くて」は「元気になる物が多くて」という風になります。

黄の食べ物 【主食】:「元気なパワーになるよ!」

■主食になる食品

米、パン、パスタ、麺類、芋、油、マヨネーズ、ごまなど

②.png■子供向けの栄養の説明
「十分食べると、元気に遊んだり走ったりできる」「疲れにくくなるよ」「集中できるよ」

■黄の食べ物でよくある質問
Q.「ご飯 (パン、麺類など)を食べるとどうなるの?」
→A. 「元気に遊んだり、早く走ったりする元気がでるよ。ガソリンみたいな役割があるよ。」
黄色の食べ物は炭水化物が豊富に含まれ、消化されると糖(グルコース)になり、活動のエネルギーとして使われます。

Q.「なんで食事しなくちゃいけないの?」
→A.「元気がなくなっちゃうよ。ご飯を食べて○○して遊ぼうね。」
食事は単にお腹を満たすだけでなく、必要な栄養素を摂取し、家族や仲間との団らんの場である大切な時間という事を教えるために、食事を省かないように促したり教えるべきだと思っています。欠食はたんぱく質・ビタミン・ミネラル等の不十分な摂取につながります。十分な栄養素は、体・頭・心のトータル的な健康に大切です。

Q.「ご飯(パン、麺類)をたくさん食べた方がいい?」
→A.「お腹がすいてるのならば、もっと食べていいよ。」
子供の食欲はアップダウンしがち。あまり食べないと思ったら、ビックリするほど食べたりします。子供は、お腹が一杯なのに無理に食事を続けることはあまりしません。本能的に、体が必要な量が分かっていると考えられています。ただし、外食など味の強いもの、お菓子やジュースなどは、お腹が一杯でも食べ過ぎることがあり、肥満につながる可能性があります。家庭的な料理の場合は、少なくても多くても、子供が欲する量を与えるのがよいと思います。

緑の食べ物 【副菜】:「体の調子が整うよ」

■副菜になる食品

野菜、果物、海藻、キノコ類など

③.png■子供向けの栄養の説明
「しっかり食べると、元気で風邪を引きにくくなるよ」「おなかの調子がよくなるよ」「キレイな肌になれるよ」

■緑の食べ物でよくある質問
Q. 「野菜を食べるとどうなるの?」
→A. 「うんちがちゃんと出るようになるよ」「風邪をひきにくくなるよ」「体の中も外もキレイになるよ」
食物繊維、ビタミン、ミネラルを十分に摂取することで、便がでやすくなったり、免疫アップして体調を崩しにくくなります。抗酸化作用などで細胞もキレイになります。子供達は「うんちがちゃんと出る」ことは良い事であると3~4歳くらいから認識しているようです。うんちをするとお腹がすっきりしたり、うんちが出ないとトイレで苦しんだりすることを、自分の経験や学校の友達の経験などを通して学んでいるのかもしれません。

Q.「人参(赤色の野菜)を食べるとどうなるの?」
→A.「目がよくなるよ」
人参、トマト、かぼちゃなどの赤い野菜はカロチンが豊富な野菜が多いので、カロチンをメインとした説明にしました。

Q.「ほうれん草(緑の野菜)を食べるとどうなるの?」
→A.「体の中も外もキレイになるし、風邪を引きにくくなるよ。」
ほうれん草、ブロッコリー、ピーマンなどの緑の野菜は、ビタミンCが豊富な野菜が多いので、ビタミンCをメインとした説明にしました。

Q. 「大根(白い野菜)を食べるとどうなるの?」
→A.「おいしくてお腹が満足するでしょう。」
大根、キュウリ、白菜、レタス、セロリなど、白っぽい野菜の場合は、低カロリーで水分が多めという事をメインとした説明にしました。野菜はお腹を満たしてくれ、将来的には体重管理などにも役立ちます。ただ、子供には太る、太らないという言葉は使わない方がいいと思うので、お腹が満足するという言い方にしました。

Q.「キノコ(根菜類、こんにゃく系)を食べるとどうなるの?」
→A.「お腹の中がキレイになるよ。うんちがちゃんと出るよ。」
キノコ、根菜、こんにゃく系の食べ物は食物繊維が含まれ、便のカサを増し、便秘予防に役立ちます。

Q.「果物を食べるとどうなるの?」
→A.「体の中も肌もキレイになるよ。風邪も引きにくくなるし、おやつにいいね。」
果物には、様々な種類のビタミンやミネラルを含みます。抗酸化作用、免疫アップ効果があります。 

 

お菓子や外での外食に関する質問にはどう答える?


Q.「お菓子は何をするの?」

→A.「ハッピーな気分になるでしょ。楽しくて美味しいでしょう」。④.png
お菓子はリラックスしたり、美味しい、楽しいと感じる食べ物。栄養素とは違う次元で心・記憶の栄養になると思います。ただし、楽しいからと言って、遊んでばかり、ゲームばかりしているのは良くないのと全く同じで、お菓子も食べ過ぎはよくないという概念を教える必要はあると思います。

Q.「なぜレストランの食事は味が濃いのに、家で食べるのはそうじゃないの?」
→A.「毎日味が濃い物ばかり食べてると、おしっこ作るところとか、体の中のお掃除屋さんが疲れ果てて、体調がが悪くなっちゃうよ。でもレストランに行った時とか、時々なら大丈夫よ。」
味が濃いというのは、塩分が多すぎる、または脂質が多すぎるという場合が多いと思います。腎臓や肝臓に負担が掛かり、将来病気になってしまうかもしれません。塩味、脂質への味覚などはどんどん鈍くなっていくので、あまり味が濃くなりすぎないように注意したいものです。

Q.「ジャンクフードは食べない方がいい?体に悪いものは食べない方がいい?」
→A. 「食べてワクワクするものや、嬉しいと思う物は食べても悪くないよ。でもこればっかり食べるのは面白くないし、やっぱり色々食べた方がいいよね。」
私は自宅では、子供に「体が悪い食べ物」、「ジャンクフード」という言葉を使った覚えはないのですが、やはり学校などで聞いてくるようです。適度に楽しむ程度なら悪い食べ物はないと思います。私はいわゆる「健康的なもの」ばかり食べても健康にならないし、「体に悪いもの」を避けていても健康にならないと思っています。

いかがでしたでしょうか。奥が深い食育。子供にもわかりやすく解説して、楽しみながら栄養に関する知識を身につけてほしいですね! 

 この記事の担当ガイド 

一政 晶子(いちまさ あきこ)

guide-48-50-50.gif管理栄養士、米国登録栄養士(RD)、米国栄養サポート臨床師(CNSC)、臨床栄養学修士。急性期病院の現場で働く栄養士経験を活かしながら、実用的な栄養管理のコツと、病気ごとの療養食・食事療法の基礎知識をお届けします。