近年平均気温も高くなってきていることもあり、熱中症で倒れる人のニュースもよく目にします。熱中症は、屋外の炎天下で運動している時に起こりやすいのですが、室内でも条件によってはおこることがあります。今回は、熱中症が室内では、どんな時に起こるのか、またその予防としての水分補給についてご紹介します。
厚生労働省の報告では熱中症の死亡者数は平成8年では9件でしたが、平成9年以降は2桁の件数になっています。近年は、平均気温が35度を越える日が増えていることも影響していると思います。
熱中症とは、体温が上昇することで、体内の水分や塩分が低下し、脳への血流も不足してその機能まで低下してしまう状態です。発見と手当が早ければ軽症で済みますが、「熱射病」のように重傷化すると、頭痛や嘔吐、めまいやだるさを感じたり、さらにひどくなると、意識障害を起こすこともあります。
熱中症と言えば、炎天下に激しいスポーツをしている時になりやすいと思いがちですが、直接日光にはあたらない場面でも起こることがあります。例えば、車内にいた乳幼児や、室内にいた高齢者がなくなった例がありました。
熱中症の発生は、気温や直射日光だけでなく、湿度が高い、風が弱いことで、体温は上がるけれど、カラダの熱が逃げにくい状況になった時に起こりやすいといえます。体温を調節するための発汗機能が低い高齢者や乳幼児、また肥満の人も皮下脂肪が多いと熱がこもりやすいので熱中症になりやすいのです。また他にも下痢や発熱中の人なども脱水症状になりやすいので危ないことがあります。
環境省では、「熱中症予防情報サイト」で、熱中症を警戒する目安として「暑さ指数」(WBGT)をだして、熱中症発生の危険度を「ほぼ安全」「注意」「警戒」「厳重警戒」の4段階にわけ、注意を促しています。
人間のカラダは、約55~60%は水分で、体重の2%の水分が失われると脱水状態になり、のどの渇きを激しく感じ始めます。体重減少が2%以上に減らさないために、汗をかく夏は、運動をしていなくても、早め早めに水分補給をすることが大切です。
成人の体内の水の摂取量・排出量は、下の表が目安です。
成人の体内の水分出納(1日あたり)単位=ml
体に入る水 | カラダから出る水 | ||
食べ物の水分 | 1,000 | 尿・便 | 1,500 |
飲料水 | 1,200 | 汗 | 700 |
代謝水 | 300 | 呼気 | 300 |
合計 | 2,500 | 合計 | 2,500 |
飲むべき量というのは、体格や体質や年齢によっても異なりますが、暑い時期は普段よりも汗をかくことで水分が失われますから、意識して水分を補いましょう。
ただ、一度にガブガブと大量に飲むと、胃液を薄めてしまい、消化不良を起こすことに繋がります。飲むときは、1回小さなコップ1杯、200ml程度を、最低でも1日に3回の食事プラス、10時、3時、寝る前など5~6回飲めば、1日1,000~1,600ml程度の水分が補給できます。
一応運動をする時の水分補給もご紹介しておきますと、運動する30分ほど前にも400mlくらいの水分を補給し、運動中は、15~20分おきに、100~200mlぐらいを補給するのがよいと言われています。ただし、これは運動の内容や個人差もありますので目安としてください。
熱中症予防には、運動(労働も含めて)中は、汗と一緒に塩分も失われていることと、カラダに水分の吸収を促すためにも塩分を含んだ飲料等をとることが大切だと、厚生労働省でも推奨しています。
市販の飲料の場合、成分表示の100ml中、ナトリウムの量が40~80mgが、0.1~0.2%の塩分に相当します。日本体育協会のサイトでは、「運動強度と水分補給のめやす」が詳しく紹介されていますので、参考にしてください。
ただ、スポーツドリンクは、激しいスポーツをする選手用に開発されたもので、水分や塩分の他にエネルギー補給を目的として糖質が多いものがあります。その場合は、水で薄めた方がよいのですが、塩分が十分なのかということになります。
熱中症が気になる時には、最近では厚生労働省の推奨するNa濃度を含む「熱中症対策」の飲料水が販売されています。またドラッグストアなどで脱水症状を対象とした「経口補水液」なども売られています。
運動量が少ない場合の水分補給は、普通の水やカフェインなどが少ない麦茶などよいと思います。緑茶やコーヒーは利尿作用がありますので、嗜好品としてはよいですが、水分補給に飲むにはむきません。
塩分や糖分の補給と言っても難しく考えず、おやつの時に、梅干しを食べたり、レモネードなどのドリンクを飲むのもよいでしょう。
また高齢者などは、足腰が弱くなると、トイレにいくのがおっくうになり、トイレに行きたくないので、水分をとりたがらない傾向も見られます。さらに高齢者は、若い人よりものどの乾きを感じにくくなりますから、乾きを感じていなくても、蒸し暑い時などは、水分をとるように声をかけてあげる方がよいでしょう。
女性は男性と比べると基礎代謝が低く、あまり冷たい飲みものばかり飲むとカラダが冷えてしまいがちです。夏場は、飲み物だけでなく、食べるものも冷たい麺類やデザートをとりたくなります。オフィスでクーラーが効いている、薄着などから、夏は意外に冷えやすい時期ですから、冷たい飲み物ばかり飲むのは気をつけてください。
もちろん水分補給だけでなく、室内の温度や湿度、風の流れなどに気を配ることも大切ですね。温度・湿度が高い時は、適度にエアコンや、扇風機を活用することも大切です。
ただし、私も若い時に経験があるのですが、エアコンの効いた室内にずっといると、汗腺がひらかなくなり、そんな生活が長く続くと汗をかきにくくなってしまうことがあります。急に暑い屋外に出た時にも汗をかくことができず、熱がカラダにこもってふらふらとめまいがしたことがあります。
高齢者は、運動不足にもなりがちですし、汗をかくことになれないと、気温の感じ方も若い人とでは鈍くなり、発汗機能が正常に働かないようになりますから、暑くなる以前からの適度な運動習慣なども必要です。
「暑い時は汗をかく」ということは、大切なことなんですね。
執筆者:All About「食と健康」ガイド 南 恵子(みなみ けいこ)