国内旅行"春の名所"

モノクロームの風景が広がっていた寒い冬が終わると、春がやってきます。菜の花や梅などいろいろな花が咲き出す春は、街の雰囲気が華やかになり、陽気に誘われて外に出る機会も多くなりますね。そんな春を感じることができる名所・旧跡をまとめてご紹介します。

【長野】飯山・菜の花公園の菜の花。
残雪の残る山々と千曲川との対比が美しい春の風景です(2000年5月2日撮影)

早春の風物詩、水仙

二十四節気の大寒から立春にかけては、一年の中でも一番寒い時期にあたります。そんな時期に一足早く春の訪れを告げるのが水仙の花。

伊豆半島南部の下田にある爪木崎(つめきざき、静岡県)は、白亜の灯台と青い海、美しいカーブを描く砂浜が印象に残る名所ですが、12月の終わりから1月いっぱいの間、可愛らしい水仙の花300万輪が岬の丘を埋め尽くします。

この爪木崎の水仙の花は、葛西臨海公園(東京都)にも株分けされていて、1月末から2月にかけて水仙が花咲く風景を楽しめます。

また日本国内での水仙の三大群生地は、越前海岸(福井県)、淡路島(兵庫県)と鋸南町(きょなんまち、千葉県)。水仙の花が一面に広がる風景は訪れた人に強い印象を残しますね。

春の訪れが遅い東北地方では、水仙が咲くのは4月下旬から5月始めにかけて。みやぎ蔵王えぼしスキー場(宮城県)のゲレンデでは50万株の水仙が花を咲かせます。こちらも見逃せない風景ですよ。

【静岡】爪木崎の水仙(2000年1月撮影)

紅梅、白梅を楽しめる梅園

水仙と同じく、早春の風物詩を告げる花の一つが梅。ひとくちに梅と言ってもたくさんの種類があり、花の色で紅梅、白梅と分けられます。

関東地方では、早咲きの梅が楽しめる熱海梅園や湯河原梅林、小田原・曽我梅林、大倉山公園梅林(神奈川県)、吉野梅郷、湯島天神(東京都)、水戸・偕楽園(茨城県)、越生(おごせ)梅林(埼玉県)などが梅の名所として知られています。

近畿地方では、南高梅で知られる南部(みなべ)梅林(和歌山県)や月ヶ瀬梅林(奈良県)、北野天満宮(京都府)が知られており、九州地方では、学問の神様としておなじみの太宰府天満宮で梅を楽しむことができます。

学問の神様 菅原道真公と深いつながりを持つ梅だけに、天満宮や天神さまには梅のある所が多いですね。

鮮やかな黄色に染まる菜の花の風景

水仙、梅とはひと味違う春の風景を見せてくれるのが菜の花。目にも鮮やかな黄色と強い香りが人々の記憶に強く刻まれます。

動物たちとのふれあいも楽しめるマザー牧場(千葉県)では、2月頃に丘一面に菜の花畑が広がります。

続いて2月中旬から3月始めにかけて早咲きの桜とセットで菜の花を楽しめるのが河津や下賀茂みなみの桜(静岡県)。本格的な桜のシーズンを迎えると、権現堂桜堤(埼玉県)で菜の花と桜のコラボレーションを楽しむことができます。

春の訪れが遅めとなる信州では、5月初めに飯山(長野県)の菜の花公園でいいやま菜の花まつりが行われます。千曲川と菜の花が織りなす風景はぜひ見ておきたい風景ですね。

【埼玉】権現堂桜堤の菜の花畑。右手奥の桜とのコントラストに目を見張ります(2006年4月9日撮影)

芝桜が彩った鮮やかな空間を楽しむ

最近、注目を集めている春の風景が芝桜。桜とは品種が異なり、じゅうたんのように花畑に咲く花です。

関東地方では、秩父・羊山公園(埼玉県)や伊勢原(神奈川県)の渋田川などで4月下旬から芝桜を楽しむことができます。

また5月をすぎると北海道にて滝上(たきのうえ)や東藻琴(ひがしもこと)で芝桜が広がる風景を見ることができます。滝上の芝桜ではヘリコプターによる遊覧も楽しめますよ。

【埼玉】秩父・羊山公園の芝桜(2004年4月17日撮影)

カラフルなチューリップははずせない

春らしいカラフルな花といえばチューリップ。赤・白・黄色と歌にも歌われてますが、実際には数え切れないほど多くの品種があるとのこと。

国内でチューリップが楽しめる名所は、ハウステンボス(長崎県)、なばなの里(三重県)、砺波(となみ)チューリップ公園(富山県)、上湧別チューリップ公園(北海道)など。

砺波チューリップ公園では、ゴールデンウィーク期間を中心にして毎年となみチューリップフェアが開催されます。450品種にも及ぶチューリップが園内を埋め尽くすさまは見事の一言ですよ。

【長崎】ハウステンボスのチューリップ(2001年4月28日撮影)

落ち着いた色彩の藤棚にも注目したい

鮮やかな花たちが注目を浴びる中、落ち着いた色彩を見せる藤も春を彩る花の一つです。

唐津湾を見下ろす唐津城(佐賀県)では、天守閣のすぐ近くに樹齢百年を超す藤棚があり、薄紫色の花が城を訪れた人々の心を落ち着かせてくれます。

また、あしかがフラワーパーク(栃木県)では、畳500枚もの広さに枝を広げる藤の巨木をはじめとして300本以上の藤をまとめて見ることができる稀有な名所なのです。

【佐賀】唐津城の藤棚(2005年5月2日撮影)

可憐な花、ネモフィラの青に包まれる

国営ひたち海浜公園(茨城県)では、5月になるとネモフィラという可愛い青色の花がみはらしの丘を埋め尽くします。新たな春から初夏の風景として定着し、今では多くの人が集まるようになりました。

くりはま花の国(神奈川県)など他の場所でもネモフィラを使った新たな風景が展開されつつあり、これからさらに注目を集める花の風景となります。

【茨城】国営ひたち海浜公園のネモフィラ(2007年5月12日撮影)

色鮮やかなポピーが広がる風景

ひなげしとも呼ばれるポピーは、アイスランドポピー、カリフォルニアポピー、シャーレーポピーなど様々な種類があります。

生駒高原(宮崎県)では、4月下旬から5月にかけて霧島連峰をバックに広がるアイスランドポピーの畑が見られますし、くりはま花の国(神奈川県)では、5月中に100万本にも及ぶポピーの花で埋め尽くされた谷戸をのんびりと歩くことができます

【神奈川】くりはま花の国のポピー(2008年5月17日撮影)

残雪が残る風景も春ならでは

春を代表する名所を取り上げると、どうしても花のある風景が多くなってしまいますが、花がなくても春ならではの風景があることにお気づきでしょうか。それは山に残る残雪の風景。冬から春への移りゆく日々を体感できる貴重なスポットとも言えますね。

日本一の山、富士山は静岡県、山梨県の双方から山容を美しく眺められますし、奥飛騨温泉郷(岐阜県)にある新穂高ロープウェイからは、雪をたっぷり抱いた北アルプスの山々を間近に見ることができます。

この他にも盛岡市内(岩手県)からの岩手山、甲府盆地(山梨県)から眺める南アルプスの山々など様々な場所から山に残る残雪の風景を楽しむことが可能です。

【静岡】富士川楽座から眺める富士山(2004年4月撮影)

ひな飾り、鯉のぼりがある風景

もう一つ春にしか見られない風景があります。それはひな祭りと鯉のぼりのある風景。

桃の節句であるひな祭り(3月3日)につきもののひな飾りですが、勝浦(千葉県)では遠見崎神社の石段を1,200体のひな人形が埋め尽くす「かつうらビッグひな祭り」が行われますし、伊豆半島の稲取温泉(静岡県)では、雛のつるし飾りという独特の風習が注目されて観光スポットの一つになりました。

また端午の節句(5月5日)に向けては、各地で鯉のぼりが優雅に泳ぐ風景を見ることができます。

島原城(長崎県)では、お濠の上に鯉のぼりが泳ぎ、秩父(埼玉県)の横瀬川や、大歩危峡(おおぼけきょう、徳島県)、能登半島・大谷川(石川県)などでは、川の上に鯉のぼりを泳がせています。たくさんの鯉のぼりが風になびくさまは壮観そのものですよ。

【徳島】大歩危峡を泳ぐ鯉のぼり。壮観の一言です(2005年5月撮影)

執筆者:AllAbout「名所・旧跡」ガイド 村田 博之(むらた ひろゆき)