桜で楽しむ春の暮らし

桜は古くから日本人の繊細な美意識を育み、暮らしを彩ってきました。各地から桜の開花が聞こえるこの季節、住まいにも桜とその優しい色を取り入れてみましょう。

 

日本人と桜の関係

日本人の生活と桜との関わりは、稲作が始まっていた弥生時代のころからで、暦がなかった当時は毎年春に咲く桜を見て、その年の収穫を占ったといいます。

桜は「万葉集」や「古今和歌集」でも多く詠まれ、桜を愛で歌会を催す花見は奈良・平安時代の貴族が始め、今日に見られる賑やかな宴会風の花見は、秀吉による盛大な宇治醍醐寺の花見がルーツといわれています。その後、江戸の庶民にとって花見は貴重な娯楽となっていきました。また現代でも「義経千本桜」や「長屋の花見」など、歌舞伎や落語の世界でも欠かせない題材となっています

桜の淡いピンク色は、柔らかな優しさや穏やかさを感じさせてくれます。クッションカバーやランプシェード、あるいは桜をモチーフにした小物などからお部屋に取り入れてみましょう。

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インテリアコーディネーター

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今回の特集にて「桜」について教えていただいた、氏家香澄さん。

プロフィール
2級建築士、インテリアプランナー、キッチンスペシャリストとしても活躍。住まいと暮らしに関する豊かな知識と経験をもとに、造作家具デザイン、インテリアコーディネートなど幅広い活動を展開している。

品種の多さが物語る日本人の桜への思い

日本の桜は園芸品種を含めると300種以上に達し、この驚異的な数も日本人の桜に対する特別な思いをものがたっています。国内の桜の約8割を占めるのは「ソメイヨシノ」で、全国各地に見られます。ソメイヨシノは江戸後期に江戸の染井(現在の東京都豊島区)で作られた品種で、生育が早く花付きも良いため、それまで一般的だった「オオヤマザクラ」などの自然種に代わって主流となりました。

気象庁の開花予報も、このソメイヨシノが基準になっています。桜の開花は、気象庁が定めた一本の標本木に5~6輪の花が開いた状態をいい、1日の平均気温が10~12度で開花し、約一週間で満開となります

桜の花と淡いピンクで華やいだ春を演出

毎年桜の開花を待ちわび、短い花盛りを楽しんでいる方は多いことでしょう。年齢を重ねるに連れて桜を楽しみにする気持ちは増していくようですし、桜には、人それぞれの思いが込められているようです。

そんな日本人の心ともいえる桜を、お花見で楽しむだけではなく、活け花や、季節感あふれる桜いろの小物を上手に使って暮らしの中に取り入れてみてはいかがでしょう。最近では、一般的なお花屋さんでもハウス栽培による桜を扱うお店が増えています。値段もお手頃ですので、ぜひ一度お近くのお花屋さんをのぞいてみてください。

桜は、花ぶりの良いものを大胆に活ければ、シンプルなスペースによく合います。また、小ぶりの花器に、花と葉が同時に楽しめるオオシマザクラや濃いピンクのカワズザクラをアレンジして飾るだけでも、春の華やかさと優しさがご家庭で味わえます

 

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桜の写真を撮って、淡い桜色が上品に映えるグレーやシルバーの写真立てに飾ってみましょう。

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穏やかな春のひとときを桜の和菓子や桜湯で。黒の小皿が淡い桜色を引き立てます。

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お祝いごとの多いこの季節には、桜をイメージしたハガキやレターセットを使って、メッセージを添えてみませんか。

若返り、癒し効果のある桜色

桜の花の淡いピンクは、子供服や玩具などに使われることが多く、また若返りの色として知られています。ふんわりとした優しさや穏やかさを感じさせ、心をやわらげる癒しの効果をもたらします。そのため、病院や老人ホーム、幼児施設などで使われることが多く、看護師や介護師の制服などにも淡いピンクが用いられています。

ただし、インテリアとしてピンクを取り入れる場合は、最初はカーテンなど面積の大きなものではなく、クッションカバーやランプシェード、あるいは桜をモチーフにした食器や小物などからはじめることをおすすめします。桜色が映える色の組み合わせとしては、オフホワイトをはじめ、桜の葉や幹の色にちかい落ち着いたグリーンやベージュ、グレーなど自然色系から選ぶとよいでしょう。

また、クッションカバーの刺繍やパイピング(縁どり)、タッセル(カーテン留め)などにピンクを使えば、素敵なアクセントになります。リビングはもちろん玄関や寝室、水まわりなどに、優しい気分を誘う桜いろと、春らしいさわやかさが漂う香りの小物を用いて、ちょっと華やいだ雰囲気を楽しんでみてはいかがですか

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トイレには、桜の花びらをモチーフにした香りのインテリアで、春を演出してみます。

 

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キッチンでは、ペーパータオルやふきんなどをピンク系にして春の気分を楽しんでみましょう。

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バスタイムには、桜の香りが楽しめる入浴剤で、くつろいだ時間を過ごしてみませんか。

とっても簡単「鯛の桜ずし」の作り方

きれいな桜いろと、さっぱりとした鯛の風味が食欲をそそる、春の季節にふさわしいおすしをご紹介しましょう。すしめしが面倒とおっしゃる方も簡単にできますので、ぜひ試してみてください

■材料

米‥‥2合
紅こうじ色素‥‥少量
鯛刺身用‥‥160g

塩‥‥小さじ2

甘酢(米酢)‥‥大さじ4

  (砂糖)‥‥大さじ1

酢‥‥適量
桜の花の塩漬け‥‥16本

●お米を炊くとき、紅こうじ(食紅)を入れると、きれいな桜色に炊きあがります。

●鯛のそぎ切りを甘酢ごとごはんに盛ると、すしめし味になります。

炊飯器に米と紅こうじを入れ、水を必要な分量の目もりまで加えて炊くと、淡い桜いろになります。紅こうじの代わりに「ゆかり」など「シソのふりかけ」を使ってもかまいません。ピンクにはなりませんが、すっきりとした風味が味わえます。

鯛は小さくそぎ切りにし、塩をふってから5分おいて、酢で塩をかるく洗ってから甘酢に10分~15分くらい漬けます。鯛を生に近い状態にしたい場合は、酢漬けの時間を5分ぐらいにするなど、お好みで少し短くしてください。

桜の花の塩づけは、水で塩抜きをしてから水気をきって、きざんでおき、炊きあがったごはんに加えてまぜます。

器に(3)を盛り、その上に(2)の鯛を汁ごとのせ、軽くまぜます。

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「桜ずし」の作り方を教えてくれた梅村由美子さん。おすしをはじめ日本料理の指導、教室を国内に限らず世界各地でも開催。雑誌やテレビでも活躍し、著書に『ケーキの本』(講談社)、『華やかおすしでおもてなし』、『にぎやかおすし』(ソニー・マガジンズ)などがある。

桜の季節が近づくと、桜を使ったお菓子やお茶も店頭に並びます。目で、舌で、全身で春を味わいましょう。家族でお気に入りを選ぶのもこの季節の楽しみのひとつです。

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「桜餅」の関東版。餡を小麦粉の皮で巻き、塩漬けの桜葉でくるみます。長命寺は東京・向島にあり、隅田川の桜を利用して作ったこの餅がお寺のそばで売られたことからこう呼ばれています。

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蒸した餅米を荒く挽いた道明寺粉を使用。大阪・藤井寺の道明寺が発祥のため、この名がつきました。つぶつぶの餅となめらかな餡、塩漬けの桜の葉が絶妙の調和をみせ、関西ではこれを「桜餅」と呼んでいます。  

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塩漬けの八重桜の花にお湯を注いだもので、結婚式などおめでたい席でお茶の代わりに出します。お茶は"お茶をにごす"を連想させるため、この飲みものが選ばれたようです。