和室で寛ぎのひとときを楽しむ

和室はさまざまに活用できる機能性と伝統美を合わせもった空間です。機能と伝統から生み出される和室の居心地のよさを再認識してみましょう。

"たたむ"を語源とする"畳"、「古事記」にも登場

和室は、日本人の暮らしの中で生まれた知恵や美意識が凝縮された、心地よい空間です。敷かれている「畳」は「たたむ」という言葉から生まれ、その歴史は古く、「古事記」に登場しています。その頃の畳は文字通り、たためるように工夫された薄い敷物でした。厚みを持つようになったのは平安時代の頃ですが、当時はまだ部屋全体には敷かず、座ったり寝たりする場所で使用していました。庶民の住まいに取り入れられたのは江戸時代になってからで、日本人の住まいになくてはならないものとして定着していったのです。

{コラムキャッチ}:ライフスタイル

座卓を使ってのひとときは、落ち着いた時間をつくってくれます。

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和室がない場合でも、市販されている敷きダタミを置けば和の空間ができあがります。

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今回の特集で「和室」について教えていただいた、塩野哲也さん。

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<プロフィール>
編集思考室シオング代表。インテリア月刊誌『室内』の元編集者。国内外の建築家やインテリアデザイナーへの豊富な取材経験を活かし、快適な空間とは何かを追求。執筆やインテリアコンサルティングなど、各方面で活躍。 webマガジン「colla:j」を配信している。

和室を快適に、美しく演出

こうした畳は、和室の美しさを引き立てる重要な役割を果たしています。たとえば床の間の前の畳は、床の間に対して目が並行になるように敷くのが基本です。これは水平な線が安定感を生み、床の間を落ち着いて観賞できるようにしているからです。畳には視覚的な美しさとともに、イグサの香りや天然素材ならではの温かな手触りなど、五感に働きかける心地よさがあります。

そして和室に不可欠なのが、掛け軸や美術品、草花や季節のしつらえなどを「飾る」ための空間「床の間」です。茶道では、床の間が主人のおもてなしの気持ちを伝える舞台となります。さらに床の間と畳を引き立てるのが、外界と中をやさしくつなぐ「障子」です。障子を通して届くやわらかな光は、床の間に飾られた絵や花を引き立て、和室の美しさをいっそう映えるものにしてくれます。

床の間は、お客様の好きな絵やちょっとしたユーモアなど主人のメッセージを演出する空間です。

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リラックス、そして語らいの空間として

このような落ち着きのある空間「和室」を、もっと気軽に活用してみませんか。和室は畳に直接触れることを想定した空間ですから、まず横になって思いきり手足を伸ばしてみましょう。和室がリラックスするための最適な空間であることがわかるはずです。畳の適度なやわらかさとひんやりした肌触りは心地よく、夏の疲れた体を癒やしてくれます。ゆっくりと呼吸をしてみるとイグサの香りも広がり、ストレスも緩和されていくことでしょう。窓を開け放せば、自然の風や虫の声も聞こえ気持ちがよいものです。

また、和室はゆっくりと語らうのにもよい空間です。たまには食卓をダイニングから座卓に移してはいかがでしょうか。いつもと雰囲気が変わり、思いがけない話題が広がるかもしれません。週末には、食後のお茶やご夫婦でワインを楽しみながら、普段ゆっくり話せないことを心ゆくまで語り合うのもよいものです。

そして大勢の友人をお招きしたときは、座ぶとんを車座に並べると和気あいあいとした雰囲気が生まれ、話が弾みます。床の間には、おもてなしとして、お客様の趣味にちなんだ絵や小物をさりげなく飾ると、粋な演出となり会話をいっそう楽しいものにすることでしょう。  

床の間や座卓に苔玉や小さな盆栽をあしらうと、涼しさを感じさせるインテリアになります。

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子どもの遊びスペースとしても

和室はものを広げて作業する空間としてもおすすめです。家族の写真を広げてのアルバムづくり、手紙の整理や着物の手入れなどテーブルの上ではできない作業が可能です。また始めてしまうと片付けることが難しいジオラマなど趣味に没頭する場合も、ふすまで隠せる和室は便利で重宝する空間です。

小さなお子さまがいらっしゃる場合は、遊び部屋としても使えます。畳は緩衝性があるので転んでも心配が少ないのが嬉しいポイントです。

和室はくつろいだり、家族や友人との語らい、そして趣味を楽しむなど多様な使い方ができる空間です。もっと気軽に活用して、和室の居心地のよさを見直してみませんか。

小さめの文机を置くと、読書や手紙を書くなどひとりの時間を楽しむことができます。

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着物の片付けや写真の整理など、和室は広げる作業をするのに便利です。

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涼しさを与えてくれるグッズたち

和の空間にひとつあるだけで、夏のひとときを涼しくしてくれるグッズを紹介します。

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回転する背もたれ付きの座椅子です。座り心地のよい座面は、広さがあるのでアグラをゆったりと組むことができます。回転することで近くのものを取るのにも便利です。

 

 

 

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木の質感と木目の美しさをが引き出された、北欧家具を思わせるようなスクリーンです。ちょっとした目隠しやインテリアとして涼しさを演出します。

 

 

 

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フィンランドのデザイナーが開発したライトです。シンプルでモダンを基調とする北欧のデザインが「和み」とやわらかい雰囲気を生み出しています。

 

 

 

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籐は柔軟性や耐久性の他に吸湿性なども高く、夏向き枕の素材としてうってつけといえます。しなやかで触感のよい籐の枕で、昼寝を楽しんでみませんか。

 

 

 

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まるで水中に蚊取り線香が浮いかんでいるような手作りガラスの蚊取器です。ガラスの中からゆっくりと煙が上がり涼しげな夏のインテリアです。

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美濃の薄い手漉き和紙をうちわの竹に貼り、専用のニスを塗って仕上げることにより透明感ががでて、涼しげな仕上がりになっています。昔は水につけて気化熱で涼んでいたことから「水うちわ」と呼ばれています。

快適な和室、求める和室の参考になる書籍のほか、和室にマッチする和ものに関する書籍をご紹介。今年の夏は、和室でリラックスしましょう。

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

自然素材、離れ感覚、和紙、障子と襖、モダン、和紙畳、眺望、リラックスなど、個性的な和室をテーマごとに103の実例で紹介。きっとあなたの目指す和室が見つかるはずです。

{本の紹介}

ニューハウス出版
2,000円(税込)

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

本物の和風住宅を考えている人のためのガイドブック。和風住宅を建てるのに知っておいた方がいい知識のほか、一流の和風住宅作品11選、特選和風住宅作品実例37選などを紹介。和風住宅の魅力を伝えています。

{本の紹介}

新建新聞社出版部
3,150円(税込)

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

「デザイン和もの」とは、現代の暮らしやライフスタイル、空間に合うデザインの和もののことで、骨董ではなく、今様の和ものです。著者が愛用している「デザイン和もの」の推奨品たちを100品に8品をおまけとして108品紹介。 ひとつひとつがとても美しく、和室はもちろん、洋室などにもマッチ。現代生活の中でしっくりと馴染む逸品ばかりです。

{本の紹介}

ラトルズ
裏地桂子(著)
1,890円(税込)