マイチェアのある暮らし

座っていると、自然と心が安らいでいく椅子があります。そこにあるだけで、空間を美しく演出してくれる椅子があります。そんな魅力を持つ自分だけの椅子「マイチェア」を選ぶ際のポイントを紹介します。

 

暮らしの中の椅子

最近、インテリア雑誌だけでなくさまざまな雑誌などにも椅子の特集記事が見られるようになってきました。ただ座る以外に、心をリラックスさせる機能や、個性を主張するインテリアとしての側面など、椅子が暮らしにもたらすさまざまな側面が注目されています。モダンなものから時代を超えて愛されてきたクラシカルな形まで、手の届かなかった有名なデザインの椅子もリメイクされ、入手することが容易になっています。

普段あたりまえのように存在し、使っている椅子だからこそ、視点を変え上手に取り入れて、家での時間を少し違った演出にしてみましょう

腰掛けてくつろぐことが目的の椅子ですが、その種類、価格はさまざま。有名なデザイナーも多々おり、コレクターアイテムのひとつにもなるほど、椅子はなかなか奥深い世界で、それだけ魅力的であるということです。お気に入りの椅子をひとつ見付けることで、その世界を垣間見えるかもしれません。

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今回の特集にて「椅子」について教えていただいた、土屋生樹さん。

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プロフィール
日本最大のインテリアショールームを持つIDC大塚家具で、商品開発や仕入れを担当。日本だけでなく世界の家具・インテリア情報に詳しい。前職のアパレル業界で培った、色彩や素材に対するセンスには定評がある。

椅子がゆとりと贅沢さを演出

ここ数年の傾向ですが、少しぜいたくな一人掛けの椅子を購入する方が増えてきています。休日の昼下がりや就寝前のひと時を自由に、ゆっくり過ごしたいということなのでしょう。家の中に、プライベートな空間を創ろうという感覚なのかもしれません。食卓でいつも座っている椅子ではなく、少しぜいたくな自分の時間を創ってくれる自分だけの椅子、お気に入りの「マイチェア」の楽しみ方をいくつかご紹介しましょう。

マイチェアを考える時、例えばホテルのラウンジに置かれているソファを思い出してみるのもいいかもしれません。座っていると心が落ち着き、そこにあるだけで空間を美しくまとめています。お気に入りの椅子がもたらしてくれる楽しみとは、ホテルのソファのように、ゆとりやちょっとした贅沢を感じさせてくれることなのかもしれません

 

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ゆったり落ち着ける自分だけのお気に入りの椅子は、ホテルのラウンジに置かれているソファのように、ゆとりやちょっとした贅沢を感じさせてくれるものを選ぶといいでしょう。

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自分に合わない椅子に座ることは、体に負担を掛けることにもなります。選ぶ時のポイントはまず目的と置く場所を決め、座り心地をしっかり確かめることが必要です。たとえばリラックスするための椅子ならば、ゆったりできる座面の広さがあり、背もたれや肘掛け、足乗せのあるタイプをお勧めします。またわずかの時間だけ座る椅子ならば、背もたれのないスツールタイプもいいでしょう。

机を併用せず、椅子単独で使用する場合は、「座面の高さ=身長÷4」を目安に選んでください。座面の高さや背の角度が調節できるかも確認しましょう。

機能性とデザイン性を兼ね備えた、自分に合った椅子を選び、くつろぎの時間を演出してみましょう。

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素敵な時間と空間を創るマイチェア

それでは空間ごとのマイチェアについて考えてみましょう。例えば、リビングルームでの楽しみ、大画面テレビで映画やコンサートなどの鑑賞時、ソファー以外にもそこにマイチェアがひとつあると、くつろぎの時間が生まれてきます。おすすめしたいのは、リクライニング機能を備えた椅子。足乗せやヘッドレストがあると、まるで飛行機のファーストクラスのシート感覚で、リラックスしたひと時を楽しんでいただけます。もちろん、一人静かに読書を楽しむにも、外からのやさしい光を浴びながらの昼寝などにも最適な一脚です。

キッチンもマイチェアの存在は、毎日のクッキングタイムを快適なものに変えてくれます。例えば、キャスターが付いて自由に移動できる椅子。座る高さを高い位置で固定することにより、立ちっぱなしの家事から解放してくれるばかりか、レシピや料理の本を読むゆったりとした時間もつくってくれます。

また、お天気のよい日にはアウトリビングにマイチェアを出してみましょう。風や光を感じるティータイムはいつもと異なる雰囲気を演出してくれるのです。寝室にも椅子が一脚あると、読書や語らいなど今までになかった時間を創り出してくれます。意外と脱いだ服をちょっと掛けておく場所としても重宝します。玄関には、空間に合ったお洒落な椅子をおすすめします。もちろん、靴を履く時のサポートにもなりますし、住む人はもちろん、訪れる人を優しく迎えてくれるではずです。

いつもの空間にいつもとは違う自分の場所を創るマイチェア。居心地のいい場所には、いい時間が流れていきます。自分の好きな椅子を見つけ、自分の時間をゆっくりと楽しんでみましょう

 

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ワイドで低い座面の椅子。一人で本を読んだり、ご夫婦で会話を楽しんだり、就寝前のひと時をゆったりと過ごせます

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座りながら料理や下ごしらえができます。移動もラクで、キッチン作業を楽しくします

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天気のよい日には、ロッキングチェアに座り自然の声に耳を傾けるのも素敵です

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自由に形を変える愉快なビーズチェア。大人が座れば子供と同じ視線で会話ができます

いかがですか? こんなマイチェア

自分だけの椅子を持ちませんか? くつろぐために、遊び心を充たすために、そして何気なく座るだけの椅子がひとつあるだけで、お部屋の雰囲気を楽しく変える、マイチェアを紹介します

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スペイン生まれのシンプルなスツール。優れたデザイン性と強度が特長。キッチンや玄関におすすめです

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日本を代表するインダストリアル・デザイナー柳宗里の作品。蝶が羽をひろげたように緩やかな曲線が特徴です

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イタリアンモダンデザインのチェア。光沢のある美しい素材は、耐久性に優れたテクノポリマー製です

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デンマークで、今もっともも有名な椅子のひとつ。デンマークの著名インテリアデザインナー、ナナ・ディッツェルの作品です

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バルセロナ万博の時に、スペイン国王夫妻を迎えるためにデザインされた椅子。豊かなリラックスタイムを過ごせそうです

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色も形も可愛いスツールで、どんな部屋にも似合いそう。サイドテーブルとしても、2つ重ねてオブジェとしても使えます

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建築家ル・コルビジェのデッサンをもとにデザインされたアームチェア。背とシートは牛革。リビングに置きたい一脚です

 

 

ミッドセンチュリーの名作たち

ここでは主に1940年から1960年代にかけてアメリカを中心におこった新しい家具デザインのムーブメント"ミッドセンチュリー"の際に産み出され、今なお多くのファンを持っている有名デザイナーが手掛けた椅子を紹介します

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ラウンジ チェアは、ベトナム戦争が本格化しつつある時代に、イームズが友人の映画監督、ビリーワイルダーのためにデザインしたと言われています。イームズ夫妻が関わってきた技術・アイデアの集大成といえるこの椅子は、そんな気持ちとともに人間工学に基づいた設計、型押し合板の研究にイームズがかけた時間と情熱、豊富な経験のすべてが注ぎ込まれた不朽の名作です。

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金属彫刻家だったハリー・ベルトイアは、成形合板でなくスチールワイヤーによるシェル構造で椅子をデザイン、完成したのが「ダイヤモンド・チェア」です。彫刻のようにあらゆる方向から眺められ、またどこから見ても美しいフォルムを持っています。また冷たい印象になりがちな金属を使った椅子にも関わらず、暖かい雰囲気のある椅子です。

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建築家であるアルネ・ヤコブセンが、自身が設計したコペンハーゲンのロイヤルホテルのロビーに置くためにデザインしたのが「エッグチェア」。ロビー内で隔離させた空間を作るためにハイバックにし、体全体を包むようなフォルムとして安心感とプライバシーを与えてくれます。

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プラスチックの一体成型という非常に画期的な手法を用い、この素材でしか実現不可能な流れるようなフォルムを持つ「パントンチェア」は、その名の通りデザイナーの名を冠したもの。「世界初のプラスティック一体成型」のほか、「スタッキングできる」という大きな特徴を持っています。

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LC4 シェーズロング(寝椅子)は、20世紀を代表するもっとも偉大な建築家ル・コルビジェがデザインした椅子で、いかに快適に身を任せられるかにこだわって考え、その独特なフォルムは兵士の眠る様子を参考にしたと言われています。また初期のものはスチールパイプが脚となり、ロッキング・チェアとして使われていました。

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座面の官能的な曲線とスチール脚の直線という組合せが美しいコントラストを描く「エロエス 2 チェア」は、フィリップ・スタルクがデザインした魅力的なスツール。一見硬い座り心地を予感させるものの、弾力性のあるポリカーボネイトの座面はチェアでありながらソファのような曲線と柔らかさを実現しています。

多くの書籍が出版されていることからも、"椅子"という世界の奥深さがわかります。知れば知るほど楽しくなる、椅子についての書籍を紹介します。お気に入りの一脚も、きっと見つかります。

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

チャールズ&レイ・イームズの作品はもちろん、人となりも取材し、さまざまな側面から"イームズ"を徹底研究した一冊。特に最近イームズに興味を持った方にとっては、椅子だけではないイームズ夫婦の全仕事を把握できるうってつけの一冊。手頃な価格も嬉しい。

{本の紹介}

マガジンハウス
定価:1,200円+税

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

工業化、そして大量生産が盛んになったミッドセンチュリーという時代、椅子の分野では新たな素材と技術にデザイナーのひらめきが加わり、多くの名作と呼ばれる椅子が生み出されました。本書ではプラスチックだからこそできた名作椅子を多数紹介。椅子の美しさを再認識させられます。なお「美しい椅子」シリーズは全5巻。さまざま切り口で美しい椅子を紹介しています。

{本の紹介}

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

ロングセラー、ベストセラーには理由がある。椅子が生まれた背景を探りに世界各国を訪れ、椅子の素材や製造方法はもちろん、デザイナーの周辺の人々にまで著者自らが取材してまとめた、モダンチェアの真髄に迫る一冊。

{本の紹介}

島崎信(著)
建築資料研究社
2,300円+税

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

ミッドセンチュリーから新進デザイナーまでの名作、新作から、いま欲しい椅子全240脚を完全解説。「価格帯別紹介」や「掲載商品が買えるショップ紹介」もあり、"何かいい椅子が欲しい"と検討している方にとっては便利な一冊。パラパラ見ているだけで、購入意欲はさらに盛り上がること間違いなし。

{本の紹介}

ROOM+編
白夜書房
定価:2,100円