香りのおもてなし

「お香」の文化が栄えた平安時代から、日本は香りをたしなむ優雅な遊び心がありました。日本人ならではの繊細な気配りが秘められた、その奥ゆかしさと魅力、楽しみ方をご紹介します。

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古代インドから西へ渡った香りの文化は、心身をリラックスさせる香油(こうゆ)のような形になって中世ヨーロッパへと広まり、アロマテラピーを確立させていきます。そして香りの愉しみは、やがてフランスで香水となります

 

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一方、東に渡った香りの文化は、仏教伝来とともに「祈りの香り」として日本に伝わってきます。室町時代には、貴族や上級武士たちが、「お香」の愉しみを高次元な芸術の世界へと高め「香道」をつくりあげました。

 

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香りを言葉で表現する時、甘い香り、スパイシーな香り、華やかな香りなどと味覚や視覚など、他の感覚の表現をとることがあります。これは香りが五感に強く結びついているという表れです。 現在では、貴重な香木として珍重される伽羅(きゃら)、白檀(びゃくだん)の香りには、鎮静効果があることが検証されています。

 

 

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お気に入りの音楽に耳を傾けるように、美しい絵画を眺めるように、暮らしの中に香りをプラスしてみましょう。心を満たす時間が、ゆっくりと流れていきます。

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株)銀座香十 代表取締役社長/(株)日本香堂 顧問/読売・日本テレビ文化センター講師

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プロフィール
香の伝統芸術「香道」を欧米に広く紹介するイベントや演出を数多く手がける。香りをテーマ-にしたカルチャー教室では講師を務める。フランスのインテリアフレグランスのトップブランドESTEBANの日本導入プロデュースなどを手がけてきた。

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「お香」は、ほどよく香らせるとやすらぎ効果を高め、用い方によっては気分を高揚させる作用があります。香りをくゆらせる空間や状況を考えて、おもてなしの香りを演出しましょう。

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玄関で「お香」を焚いてお客様を迎え入れることを「お迎え香」といいます。お客様がお見えになる20分程前には焚き終わり、煙が漂っていない状態にしておきます。香りは目に見えなくても確かに存在します。あくまで香りは、さりげなく感じさせる程度におさえることが大切です。

また、食事を中心とした集いの場合は、料理やワインなどの風味を損なわないために、料理以外の香りをたてることは控えましましょう。廊下などに「隠し香炉」として焚き、控えめな演出で、細やかな気配りを伝えます。

 

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お線香状の「スティック」はお香の基本的なタイプで、均一に燃焼し香りがゆっくり広がります。

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「コイル」は長時間くゆらせ、広い空間へ香りをすみずみ届けます。

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「コーン」は短時間に燃焼し、香りを多く漂わせます。それぞれ香りの放ち方が異なりますので、空間や目的に合わせて使い分けましょう。

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家族やお客様が集うリビングには、雰囲気を爽やかに変える力のある、花を主体に調合した香りはいかがでしょう。またバニラエッセンスを中心にした、ほのかに甘い香りは、ほっとする温もりを感じさせます。

「香」をくゆらす空間が和室なら、文字通り「沈香(じんこう)」の落ち着いた香りがふさわしく、お客様の寝室には、緊張をほぐすラベンダーの清々しい香りが安眠を誘います。このように香りを空間に合わせて組み替えることにより、その応用範囲は広がっていきます。

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また、香りには季節感があります。秋から冬にかけては、深みや重みを感じる香りを主体にしてみましょう。バニラエッセンスやシナモンを中心に調合した落ち着いた香りが空間に温もりを醸し出します。

度の高くなる季節には、清涼感のある香りを選んでみましょう。爽やかなミント系やフルーティーなシトラス系や、香木・白檀の香りも新鮮な印象を演出します。それぞれの香りの特徴を活かして、ちょっとした気分転換に香りを生活の中に取り入れてみてください。

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日本には、新しくはじめる「あらたまり」という事初めの歳時があります。この初春、新たな思いをこめて香を焚く"香初め"で、お客様をお迎えしてみませんか。

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和室にはお茶会の席のような、繊細でさりげない香りの演出を心掛けましょう。

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玄関は住まう人の暮らしぶりを伝えるスペース。
さりげなく陶磁などの香炉をしつらえ、
お迎えを心地よくする配慮を。

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寝室には香炉らしくない人形など、インテリア性の高い遊び心のある香炉はいかがでしょうか。

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季節に合わせてインテリアの趣を変えるように、空間に合わせた香りを漂わせてみませんか。さりげなく香らせる演出が、暮らしに彩りを添えます。

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四季折々の花や香りで季節感を演出する香袋。「お香」のたしなみが、目でも楽しめます。

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お部屋の上方に向けて4、5回スプレーすると、香りが瞬時に広がります。玄関、トイレなど素早く香らせたい空間に適しています。

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ガラス製のお猪口や深めのお皿に入れて、ドレッサーやパウダールームに香りのアクセントに。

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クローゼット、洗面所、納戸、トイレなど狭いスペースに吊り下げて使用します。

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香りと光を組み合わせると、ほっとする温かな雰囲気になります。照明を少し暗くして、癒しのひと時を過ごしましょう。

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書斎、リビング、玄関など香らせたい場所にさりげなく置いてみましょう。

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香りを陶器の手箱に封じ込めた室内香は、ふたをを開けると、香りがほのかにたちあがります。

お香をお気に入りのガラス皿に乗せたり、ちょっと深めのボールやワイングラスの中に立てたり、和洋にこだわらず、身近にある食器などを利用して思いつくままにアレンジしてみましょう。遊び心あふれる洒落た香りのインテリアを、自由にコーディネートしてください。

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ライフスタイルガラス皿を重ねたり、ガラス鉢の中にセラミックをアレンジしたり、
ちょっとしたアイデアがお洒落感を演出します。

ライフスタイルコーンタイプの受皿としてソーサーや小鉢など身近な食器を使ってディスプレイします。

ライフスタイル気に入りの小皿や銘々皿を、コイルタイプの受皿に活かすのもアイデアです。

ライフスタイル最近はモダンなインテリアにとけこむシンプルなデザインの香立てが増えてきました。

「香り」は心身ともにリラックスさせてくれたり、逆に高揚させてくれたりと、さまざまな精神作用があります。「香り」に関する書籍をご紹介しますので、その時々の状況によって使い分け、より豊かな生活や暮らしを演出してはいかがですか。

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

サブタイトルに「日々の暮らしにひとふりのエッセンス」とあるように、香りを楽しむための情報がこれ1冊に濃縮されている。しかも「和の香り」がメインテーマ。お香をはじめとする日本独自の伝統的な香りについて、その楽しみ方が美しい写真とともに紹介されている。日本の香りの奥深さに触れ、見ても読んでも堪能できる1冊。

{本の紹介}

学研
定価:本体1,400円+税

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

日本式の香りの代表格であるお香に対し、西洋式の香りの楽しみ方といえばアロマテラピー。本書は、アロマテラピーの基礎知識から始まり、芳香浴や香りのブレンド方法、心と体をいやす精油に関する知識、さらに暮らしを快適にするアロマレシピなど、文字通りアロマに関する情報を満載。1冊手元に置いておくと便利な本だ。

{本の紹介}

小林和歌子著
西東社
定価:本体1,200円+税


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