自然農薬を使ってみよう!

病害虫が発生しやすい季節になりました。ハーブや野菜など、化学農薬を使うことがためらわれる場所に、自然農薬を取り入れてみませんか?

自然農薬とは

shizen_index2_img01.jpg 自然農薬とは化学合成された薬品ではなく、ハーブ等の植物エキス、木酢液、竹酢液など自然素材で作った農薬のことです。
病害虫を防ぐ物から植物を元気にしてくれるものなど、コンパニオン・プランツと共に古くから試みられている方法で、経験と観察を積み重ねて伝えられてきた漢方薬や民間薬のようなものと言えるでしょう。
市販の化学農薬は確かに効き目がありますが、病害虫もそれに対する耐性や抵抗性・免疫をつけ、同じ薬品を使い続けるとだんだん効きにくくなってきます。
一方、自然農薬は市販の農薬のような劇的な効果はありませんが、耐性・抵抗性はつかず、病害虫が付きにくくなっていくと言われています。
また化学農薬の使用では残留農薬が懸念されますが、その点自然農薬は時間の経過と共に分解されて植物や土に吸収されていくので、環境にも優しいと言えるでしょう。
完全無農薬とまではいかなくても、減農薬の一助として試してみる価値はあると思います。

自然農薬の作りかたと注意点

shizen_index2_img02.jpg 自然農薬の作りかたには、水で煮出す、酢に漬ける、アルコールに漬けるといった方法があります。 牛乳、木酢液、竹酢液といったものは、そのままか水で希釈するだけで使用できます。

【保存の注意点】
自然農薬には保存料など入っていませんから、そのぶん保存期間は短くなります。
水煮の場合は冷蔵庫で2~3ヶ月、酢漬けの場合は冷暗所で2年くらい、アルコール漬けの場合は冷暗所で2~3年くらいが限度です。
一度希釈したものは保存に向きません。その都度、必要な分だけ希釈して使いましょう。
ニンニク液とトウガラシ液のように、薬液を混ぜて使うこともできますが、これも必要な分だけ、その都度混ぜて使用しましょう。
また、保存の際はお子さんなどが誤って口にする事が無いよう、わかりやすいラベルを張るなど、充分に気をつけてください。

【使用の注意点】
自然農薬だからといって、安全とは限りません。
安易に扱わず、化学農薬を使うときと同様にマスクや手袋、ゴーグルなどを着用し、誤って目に入ったり、吸い込んだりすることがないように注意しましょう。

散布の際は、病害虫が住みつきやすい葉裏を重点的に、滴る程度にたっぷりと行ないます。
日が翳り始める、夕方に散布すると良いでしょう。
市販の化学農薬と違い、自然農薬の効果は一週間くらいです。
濃い薬液を使うと薬焼けすることもありますから、薄めに希釈したものをこまめに散布すると効果的です。

よく知られている自然農薬

shizen_index2_img03.jpg 【そのまま使える自然農薬】

コーヒー⇒ダニ類
飲み残しのコーヒーを、植物に噴霧します。コーヒーは、砂糖が入っていても構いません。
また、インスタントコーヒーでも効果があります。

牛乳⇒アブラムシ、ダニ類
牛乳をアブラムシに吹きつけるとやがて牛乳が乾燥して、その縮む力でアブラムシが圧縮されて窒息死します。
午前中に葉が乾いている状態で、霧吹きで葉の表裏まんべんなく噴霧します。

ビール⇒ナメクジ
ナメクジは、ビールに引き寄せられる性質があります。
ビンなどに飲み残しのビールを入れて、ナメクジの出そうなところに置いておくと、勝手に入って溺死してしまいます。

草木灰
その名の通り草や木をじっくりと燻すように焼いて作られた草木灰は、アルカリ性の肥料となるだけでなく、病害虫を寄せつけない効果があります。
草木灰は露や雨、水やりなどによって溶けて吸収されるので、他の自然農薬とは異なり、朝方まだ露が残っている時間に葉面散布するのが効果的です。
風のある日を避け、フルイなどを使って葉全体にかかるように薄く撒きます。

【希釈するだけで使える自然農薬】

木酢液
木酢液とは、炭を焼くときに出る煙を冷やして液化したものです。
病害虫の予防のほか植物が元気になる効果があるとされていて、ペットボトル入りの木酢液が市販されています。
ラベルに書かれた希釈倍率で薄めて使用します。

竹酢液
木酢液同様に竹炭を焼くときに出る煙を冷やして、液化したものです。
竹自体に殺菌効果があることから、木酢液よりも強い殺菌効果があるとされています。
ラベルに書かれた希釈倍率で薄めて使用します。


酢は、穀物酢か米酢を使います。合成酢では自然農薬になりません。
酢を水で25~50倍に希釈し、葉面にたっぷり散布します。
植物活力剤のような効果があり、ウドンコ病にも効きます。
一週間に一度くらいの割合で、散布すると良いでしょう。
また、※展着剤として石鹸を5グラムほど水に溶かして加えると、効果が持続します。
※対象となる葉や病害虫に付着しやすくするために、散布液に混入する薬剤のこと。

【自分で作る自然農薬】

shizen_index2_img05.jpgニンニク液
ニンニク一玉をほぐしてすり潰し、水を1リットル加えて布で漉します。
この液を5倍に薄めて、葉面に散布します。
多くの害虫がニンニクの臭いを嫌うので、花壇や菜園などに混植するだけでも害虫を忌避する効果があります。
ニンニク一玉をほぐしてすり潰し、500ミリリットルの酢(穀物酢・米酢)に2週間くらい漬けたニンニク酢や、アルコール(酒・ホワイトリカーなど)に漬けたニンニクエキスなら、二年くらい保存できます。
どちらも漉してから、水で希釈して散布します。

トウガラシ液
トウガラシは真っ赤に熟したものより、熟す前の緑から赤みがかかってきたくらいのものの方が効果があります。
これを天日で干して、保存しておきます。
使用する際は密閉ビンなどに干した唐辛子一握りを入れ、熱湯1リットルを注いで蓋をして24時間寝かせておきます。
できあがったトウガラシ液は、そのまま薄めずに葉裏に噴霧します。
また、ピーマン液も同様の方法で作ることができます。

アセビ液
昔から害虫駆除に使われてきたアセビは、アオムシ、ネキリムシ、ヨトウムシなど様々な害虫を防ぐことができます。
1リットルの熱湯にアセビの葉を一握り摘み取って入れ、5分ほど煮出した後に布で漉せばアセビ液のできあがりです。
できあがったアセビ液は、葉の裏表にたっぷり噴霧します。

自然のサイクルを大事にしながらも、病害虫が寄りつきにくくなる庭...自然農薬でそんな健康な庭を目指してみませんか?

執筆者:All About「ガーデニング」ガイド 畠山 潤子(はたけやま じゅんこ