基本なのに難しい 水遣りを制する!

植物にとって必要不可欠な『水』。
ガーデナーにとって植物への水遣りは、最大関心事の一つです。
今回は、そんな『水遣り』に関して考えてみましょう。

水遣りの基本

1.水遣りの役割とは?

水遣り(潅水)には、次のような役割があります。
・植物に水を吸収させる
・水と共に、根が呼吸するのに必要な酸素を供給する
・葉に付着した埃などを落とす
・高温期には、葉や土の温度を下げる

2.水遣りはいつする?

時間帯でいえば、「水遣りは朝のうちに」が基本ですが、季節により時間帯や回数を変える必要があります。

【夏の水遣り】
暑い夏の盛り、特に鉢植えなどは、朝にたっぷり与えても夕方までにはすっかり鉢土が乾いてしまうことがあります。そんな時は我慢させたりせず、夕方にも水遣りを。また、熱くなった地温を下げる効果がある「打ち水」も、夕方に行いましょう。暑い日中では、根が煮えてしまいます。

【冬の水遣り】
冬期の水遣りは、気温が上がり始める朝~午前中に済ませましょう。夕方に与えると、日が翳ったとたんに水気を含んだ鉢土の温度が冷え、最悪の場合は植物が凍死してしまうこともあります。

3.どのように与える?

鉢植えの場合、「鉢土が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらいにたっぷりと」が基本です。
ただしここで注意したい点は、ゆっくり潅水することです。

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ジョーロなどで頭から勢い良く水をかけると、水は鉢土の表面から鉢の内側表面を伝ってすぐに流れ落ちてしまい、肝心の鉢中心部には行き渡りません。
※左図参照

また、長い間水遣りを繰り返すことにより、鉢土表面が固くなり(クラスト)さらに水がしみこみにくくなります。
鉢植えは特にその点に注意して、細口の水差しなどで株元からゆっくり優しく潅水します。
また、折をみて月に2回くらい、葉の埃を洗い流すような潅水もしてあげましょう。

庭の場合は鉢植えのように毎日水やりする必要はありませんが、気がついたらしばらく雨が降っていないとか、土の表面にヒビが出た、土を掘ってみてもパサパサ...というのは明らかに水分が足りません。
しかしジョーロでさっと水をまいただけでは、濡れるのは土の表面だけで土中には行き渡らず、すぐに乾いてしまいます。散水ホースなどを上手に使って、鉢植え同様じっくりたっぷりと水やりしましょう。

自分のクセを知る

人それぞれ『水遣りのクセ』というものがあります。
どうしても毎日水遣りしたい人、植物がぐったりしてから慌てて水遣りをする人など、様々です。前者は素焼き鉢に排水の良い土を選んで根腐れを起こさないようにしたり、後者は乾きにくいプラ鉢に表面をパークチップで覆って乾燥を防止したり...といったことで水遣りのクセをカバーすることができます。
まずは、自分の水遣りのクセを知りましょう。

臨機応変な水遣り

以前、こんなエピソードがありました。

──液肥は施肥期間内は週一回あたえますと言ったら、雨がザアザア降っている中で傘をさして蘭に液肥をあげている人がいたんです。肥料分が流れてしまいますよと言ったら、『あんたが週一回やれと言ったんだ』と怒られました──

どしゃぶりの雨の中、庭に水をまく人はいないと思いますが、融通が効かないことの良い反面教師だと思います。

水遣りはただ毎朝何となく、それこそクセで・単なる日課でというのではなく、土の乾き具合や植物の様子を観察してから与えたいものです。病害虫の早期発見にもつながりますので、毎日のチェックを心がけたいですね。

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庭の場合は前述のように頻繁に水遣りが必要なわけではありませんが、一口に「庭」といっても場所によって日照が違うので、当然土の乾き具合・湿り具合も違ってきます。
また、植えられている植物が乾燥を好むものか、他のものより水分を必要とするものかによっても水やりの加減が違ってきます。(もちろん、適地に植えることは大前提ですが...)

水を欲しがっている植物に、必要なだけ水やりできるようになれば、ガーデナーとして一人前と言えるのかもしれません。

不在時の水遣り

お盆や正月の帰省、そして長期旅行という時、気がかりなのはやはり「水遣り」ですよね。
庭植えの場合は数日水やりができなくとも大きなダメージはありませんが、鉢植えは水枯れで枯死してしまう危険があります。

そこで、不在時の鉢植えを乾燥と水枯れから守る方法を考えてみましょう。

1.鉢を一箇所にまとめて遮光ネットをかける
ベランダなどの温度上昇を防ぐ方法の一つです。

2.マルチを施す
鉢土の表面を湿らせた水苔やピートモス、腐葉土などで覆い、乾燥を防ぎます。

3.二重鉢にする
小さな鉢ほど、乾きやすいものです。植物が植わっている鉢を赤玉土や水苔を入れた一回り大きな鉢に入れて、たっぷり水遣りをしておくことで乾燥から守ります。特に素焼きの鉢は乾燥しやすいので、プラ鉢に入れ込むと良いでしょう。

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4.底面給水法を利用する
底面給水とは、水を張った容器に鉢を入れ、底面から給水させる方法です。
1ページ目の「クラスト」を防ぐのにも有効な潅水方法です。
※左図参照


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5.毛細管現象を利用する
水を入れた容器から鉢に細いチューブや布を渡して、毛細管現象により給水させる方法です。
元手のわりには、なかなか優秀な給水システムと言えるでしょう。
※左画像は、バケツに水を張り、布を渡して給水実験中 ペットボトルを利用しても良い


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6.潅水装置を利用する
最近はホームセンターなどでも様々な潅水グッズが市販されていますので、それらを利用するのも良いでしょう。
よく見かけるペットボトルを再利用した給水器は安価でお手軽ですが、商品によって水の出方にバラツキがあるようです。
画像はよくあるタイプ、小さな穴から水がしみ出す仕組み
下の画像は、水の出具合を調節できる点滴タイプ

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私も試してみましたが、一度目は3時間くらいで水が全部流れてしまいました。そこで、不織布を中に詰めて再トライ!
今度はまずまずでしたが、点滴タイプの方が調整可能な分だけ使いやすいかも...。どちらにしても、やはり事前のテストは必要なようです。
また、ペットボトルのラベルを剥がしてしまうと置き場所によっては「レンズ効果で火災?!」という危険性も無きにしも非ず...注意したい点です。

一方、長期の旅行などには、水道栓から直接引き込んでタイマー管理できる自動潅水装置が確実ですが、値が張るのが難点ですね。

なお、暑い夏の盛りに1~3の方法だけでは対処しきれませんので、他の方法と組み合わせて大切な植物たちを乾燥と水枯れから守りましょう。