カビは水周りだけに生えるわけではない~住まいの盲点

もうじき「梅雨」。梅雨といえば、お風呂場など水まわりのカビが気になるという方が多いのではないかと思います。
生活トレンド研究所の「梅雨時の家事に関するアンケート」を見ても、キッチンやお風呂場のニオイやカビを気にしている方が多いのが分かりますが、それ以外の場所は、あまり意識をしている人がいないよう......。そこで今回は、意外に知られていない水回り以外のカビ発生ポイントと、その蔓延を未然に防ぐ方法をお伝えしたいと思います。



梅雨は黴雨?

20160601_020.jpg「梅雨(ばいう)」の元々の語源は「黴雨(ばいう)」と言われています。この時季のカビは古くから人々を悩ませてきたのでしょう。

自然界におけるカビは「分解者」です。形ある遺物をもとの形を留めないまでに細かにし、生態系の循環を助ける役立つ生物です。また、カビの一部は私たちの暮らしをより豊かにする役目も果たしています。カビが無ければ味噌醤油もチーズも抗生物質のペニシリンも無かったことでしょう。

しかし、このカビの「分解者」としての性質が、こと「住まい」の中の私たちにとっては迷惑になってしまうわけです。



カビの「害」ってなに?

20160601_021.jpgでは、カビのもたらす迷惑、害とは、具体的にいったい何なのでしょうか。

まず見た目の不潔感、不快感。「汚れている」と認識されることが多いようです。加えて、昨今ではアレルギー症状や食中毒を引き起こすなどの健康被害の面での問題が、カビ害として特に注目されるようになりました。

住まい内でのカビ警戒ポイントとしては、昔から「水回り」であるのは定説です。しかし健康被害と言う点から再考すると、実は滞在しても短時間の「お風呂場」より、食中毒に直接影響しやすい「冷蔵庫内」や、長時間過ごす「寝室」「子ども部屋」にあるカビの存在に意識を向けなければなりません。でも、このことは、あまり知られていないようです。



本当に大事な「カビ注意ポイント」って?

20160601_022.jpgカビの発生要件は「湿度」「温度」「栄養」です。

例えば、「冷蔵庫内」ではカビの胞子が付いたままの、皮ごと野菜をそのまま収納してしまいがちな「野菜室」(野菜自体が水分も栄養も備えています)は鉄板のカビ温床といえるでしょう。

気温が低いから大丈夫だと高を括っていると、使いかけ野菜がカビだらけになっていたり、転じて製氷装置周りがカビだらけになっていたりします(冷蔵庫内は冷気が内気循環しているのが通常なので、カビ胞子も循環してしまいかねないのです)。

また、「寝室」や「子ども部屋」では、梅雨時なかなかケアし辛くなる「ベッド周り」も、「カビの温床」として注意を向けたいところ。

床、マクラ、ベッドマットなどにしみこんだ汗や涎などの分泌物、落ちている垢や抜け毛など、水分も栄養もたっぷりの寝室には、カビと同時にダニもわきやすいのです。ダニもカビ同様アレルゲンとして問題視されていますが、なによりベッド周りは一日のうちで最も長く滞在している人も多い場所。そのわりに、その衛生状態をあまり顧みていない方が多いように思えてなりません。



水周りも菌床に?

20160601_023.jpgただ、気密性の高い空間である近年の住まいの場合、「キッチン」や「お風呂場」といった元祖水周りこそが「菌床」となって、家全体にカビが伝播してしまうという可能性はやはり、あります。

結露しやすいあらゆる窓の周辺や、洗濯機の内部、エアコン吹き出し口などに多く見られる「黒カビ(クラドスポリウム)」は、本来「お風呂場」に生えるカビの代名詞でしたが、最近では家じゅうで見ることができます。

高気密故に湿気の逃げ場がなく、温度差のある壁や収納内部や窓の周りで結露が起こることで、ホコリや素材自体をエサにして、その場を漂っていた胞子が根を張ってしまうものと思われます。





カビの除去方法って?

20160601_024.jpg目視できるレベルまで生育したカビは、そこからまた胞子を散らすので早めに取り除かなければなりません。ただ、このケアの際、当のカビに栄養を与えてしまわないように注意しましょう。

カビにとってエサとなってしまうのは、汚れのみならず洗剤も。洗剤に含まれる界面活性剤や、石けん由来の脂肪酸カルシウムは、掃除に役立つどころか美味しいエサとしてカビの生育を助けてしまうのです。

また、カビの生育に不可欠な「水で拭く」のももってのほか。ですから、カビ菌を殺菌・失活させつつ掃除をするには、「消毒用エタノール」を使うか、濯げる環境であれば「次亜塩素酸ナトリウム」を使います。

「冷蔵庫内」や「収納内部」に生えたカビは、使い捨てられる布などに噴霧した「消毒用エタノール」で拭きましょう。靴の内部に生えたカビなどにも有効です。ただし消毒用エタノールは引火性が高いなど使用上の注意点もあります。

カビの生えてしまった寝具は、可能な限り廃棄・買い替えが良いのですが、布団の丸洗いサービスなどでもある程度は対処できます。ただ、カビ臭いニオイが残っているとまた条件が整えば生えてしまいます。

そもそもカビを生やさないためには、「万年床」を避けること。フローリングや通気性の悪いじゅうたんなどに直敷きしないこと。定期的に天日で干すこと。

布団を敷かないベッドの場合でも、ベッドメイクをまめにしなかったり掃除や換気の頻度が低いとマットがカビたり、ベッド下収納の中がカビだらけになったりします。シーツやベッドパッドは洗濯し、マットは干せなくても周囲の空気が良く動くように気をつけるだけでもカビ発生の危険性は下がります。

布団、ベッド問わず。あれば椅子などにふわっと掛布団を掛けてエアコンの冷風に晒すだけでも乾燥を促すことができます。天日干しをする時間がない場合でも「乾燥」を意識することで、カビ発生を抑えたり遅らせたりすることはできますので、心掛けてみてください。



「カビが生えるのはここだけ!」という思い込みが掃除以前にあると、思わぬカビの温床を放置しかねません。そのせいでカビ対策をしてもしても生えるという「いたちごっこ」にならないようにするためにも、水周り以外のカビにも注意して梅雨~夏を過ごしていただければと思います。




この記事の担当ガイド

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家事・掃除・子育て ガイド 

藤原 千秋

 

家の事・子どもの事・仕事の三つ巴を愉しむ三児の母ずぼら掃除を提唱
主に住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして15年のキャリアをもつ。現在は並行して家事サービス、商品開発等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、三児の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など著書、マスコミ出演多数。

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