別名「菖蒲の節句」というように、本来は菖蒲が主役の厄祓い行事でした。香り豊かで風情があるばかりでなく、厄除け効果も抜群で、菖蒲なくして端午の節句は成立しないほどです。いろいろな楽しみ方がありますが、その代表が菖蒲湯です。
<花菖蒲と菖蒲の違い>
紫系の美しい花で目を楽しませてくれる花菖蒲はアヤメ科の植物で、花菖蒲を湯船に浮かべても、香りや効能を楽しむことはできません。
お風呂に入れる菖蒲はサトイモ科の植物で、その葉っぱに独特の芳香があり、茎や根っこに血行促進や鎮痛作用があります。菖蒲にも一応花が咲きますが、花菖蒲のような華やかなものではなく、ガマの穂のような地味な花です。
つまり、お節句用の花飾りをおすそ分けしても本来の菖蒲湯にはなりませんから、きちんと菖蒲を用意しないといけません。この時期販売されている葉と茎を束ねた菖蒲湯セットを利用すると手軽でしょう。
花菖蒲では菖蒲湯にならないので注意。葉と茎を束ねた菖蒲湯セットを利用すると便利です。
<菖蒲湯の準備>
お風呂に菖蒲を入れるだけですが、ちょっとしたコツでより一層豊かな香りが楽しめます。
- まずは菖蒲の準備から。香りは葉から、血行促進や保温効果は茎の部分になりますので、両方を10本ぐらい用意して束ねておきます。(バラで使用する時は、風呂釜などに詰まらないようご注意ください)
- 沸かし湯の場合なら水のうちから菖蒲を入れ、少し高めの温度に沸かしておくと香りが増します。その後お好みの温度にぬるめて入るといいでしょう。
- 給湯式の場合には、浴槽が空のうちから菖蒲を入れ、やはり42度~43度の高めの温度で給湯し香りを高めてから、冷まして入ると効果的です。
鮮やかな緑と清々しい香りは、まさに和み系のアロマバス!
<菖蒲湯の入り方>
普段通りに入浴すればいいのですが、湯船に浮かんだ菖蒲を使い、昔ながらの遊びはいかが。
【鉢巻】
湯船に浮かべた細長い菖蒲の葉を一本とり、頭に巻いて鉢巻に。「こうすると健康で頭が良くなるんだよ」とおまじないも忘れずに!
【ハーモニカ】
葉の上下を切ってハーモニカほどの長さにし、芯があったら取り除きます。これを横に持ち、吸い込んで鳴らしましょう。結構難しいのでピーピーと音が鳴ったら大成功!鳴らなかったらのぼせない程度に練習しましょう。
菖蒲の活用術
【盛り付けに】
刺身、オードブル、焼き魚などの盛り付けに、適当にカットした菖蒲を添えるだけ。水にくぐらせて瑞々しくすると風情があり、食欲も増します。
【箸置】
作り方はあなた次第。細長い葉を適当に丸めたり結んだりすれば、それらしい形になります。家族みんなで自分の箸置を作ってみても楽しそう!
【菖蒲酒】
本来は菖蒲の根を刻み浸けこんだりしたお酒です。菖蒲には強い解毒作用があり、中国では健胃や血行促進のほか打ち身にも効く薬草として珍重されていたそうです。本格的なものは無理でも、葉っぱを器に浸しただけで風流です。
作り方はあなた次第。お好みで形作ればOKです!
上:くるくると二重巻きしてから結び、一重に箸を通しました。
中:適当に巻いてから、茎で留めました。
下:ひと結びしただけです。
【菖蒲枕】
寝床や枕の下に菖蒲を敷いたり、菖蒲で作った枕で眠り、翌日これで菖蒲湯を立てて無病息災を願う風習があります。枕を作るとなると大変ですが、枕の下に敷く程度なら手軽にできそう。菖蒲を敷いて眠るとどんな夢がみられるのか、それも楽しみですね。
【菖蒲打ち】
束ねたり縄編みにした菖蒲を地面に打ち付けて音の大きさを競ったり、折れ具合を競ったりします。地面をたたくことで悪魔を封じ、音で邪気祓いをする意味もあります。(これを【菖蒲たたき】という地方もあります)
【菖蒲切り】
束ねた菖蒲を刀にしたチャンバラごっこ。悪鬼退治や武道上達を願う意味が込められています。(これを【菖蒲打ち】【菖蒲太刀】という地方もあります)
このほかにも、アイデア次第でいろいろな使い方ができますから、美しい花菖蒲とともに、端午の節句を楽しく彩ってみてください。