住まいの熱中症予防法

猛暑のこの夏、多発する「住まい内」での熱中症の症例、死亡事例。いったい炎天下でもない家の中で、何に気をつければ熱中症を予防できるのでしょうか。住環境整備という観点から考えてみました。

 

20160701_001.jpg暦の上でも大暑を過ぎ、実際に日々各地で今年の最高気温を更新し続けています。同時に、全国的に「熱中症」による救急搬送数や死者発生の報道も相次いでいますが、なかでも想像以上に数が多く、気になるのは「自宅内(屋内)」での発症・死亡事例です。

熱中症とは外気の上昇にともなう体温の異常上昇による障害・症状の総称で、よくいう「日射病」とは異なり真冬の暖房した室内でも発症例があります。ですのでいわゆる「真夏の炎天下」のみならず、梅雨時から初秋にかけてという長いスパンで、野外のみならずあらゆる屋内(住まい内)においても、日常的に注意しなければならないことなのです。

では、具体的に「住まい内で」どのような方策を講じれば熱中症予防になるのでしょうか。今回は住環境整備という観点に絞って考え、5点ほど挙げてみたいと思います。

  1. 早朝の「北の風」を通して、屋内の気温と湿度を下げる
  2. 南向き、西向きの窓はレース、ドレープ両方のカーテンを閉めてからエアコン稼働する
  3. できるだけ住まいの最上階では就寝しないようにする
  4. 「屋内にいて、エアコンをかけていない」時には、窓を閉め切らないようにする
  5. エアコン設定温度は30度以上でも良い、ギリギリまで冷房設定温度を上げてみる



早朝の「北の風」を通して、屋内の気温と湿度を下げる

「熱中症」は、気温の高さのみならず「高湿度」であることが発症に大きく関わる症状です。まず、お住まいの地域の気象情報で、風向きについて参照してみて下さい。おそらく多くの地域では早朝から午前にかけてこの時季、風向きは「北の風」つまり北風になっていることと思います。

この朝の風は、夜気で冷やされ夜露が落ちた後であり、一日のうちで最も冷たく、また(雨の朝でない限り)乾燥もしています。ぜひ一日のはじめに、この天然のクーラーをふんだんに住まい内に導き入れて下さい。ちなみに通風のためには、窓を1箇所だけ開けても何の意味もありません。必ず2箇所以上開け、風の流れを確認することです。



南向き、西向きの窓はレース、ドレープ両方のカーテンを閉めてからエアコン稼働する

20160701_002.jpg真夏は太陽の南中高度が高く、南向きの部屋の窓であっても太陽光が直接部屋の中に差し込むことは少ないかも知れません。けれども日差しに曝された地面やテラス、バルコニーに蓄熱された輻射熱が、閉めた窓ガラスを熱し、知らず室内の気温を上げてしまいがちなのです。

あればよしず、すだれ、緑のカーテン(ゴーヤや朝顔の蔓と葉)などで窓辺をプロテクトしたうえで、なければ普段使いのカーテンをしっかり閉めて、エアコン稼働時には余計な熱気を住まいに入れないようにしましょう。特に西向きの部屋は、午前のうち、日が当たり始める前にカーテンを引いてしまいましょう。



できるだけ住まいの最上階では就寝しないようにする

二階建ての二階、三階建ての三階、ロフト、二段ベッドの上段、といった気温が高くなりがちな「屋根」「天井」に近いエリアで就寝するのを避け、なるべく低い位置で休めるように工夫してみましょう。

住まい内における「リビング」「寝室」といった区分けは暫定的なものに過ぎません。涼めるようであれば廊下やキッチンのような場所であっても我が家なのですから、眠っても別に構わないのです。柔軟に、快適な寝場所を模索してみてください。



「屋内にいて、冷房をかけていない」時には、窓を閉め切らないようにする

日差しのあるとき、通風の滞った夏の室内は外気よりもさらに10度近く気温が高くなるというデータがあります。防犯の意図などで、なるべく窓を開けたくないという気持ちも分かりますが、冷房をかけているならともかく、かけずに窓を閉め切るのは自殺行為といって過言ではないと思います。

在宅している限りは、冷房をかけていないのであれば2箇所以上の窓を開け、通風をしっかり行うことで外気温との差は2度ほどにまで縮小されます。

 



エアコン設定温度は30度以上でもよい、ギリギリまで冷房設定温度を上げてみる

冷房をかけた状態で寝るとむしろ体調を崩してしまうなど、あえてエアコンを使用しないで暑さを凌ぎたいと強く希望する人もおられることかと思います。そういった方に、ぜひ試して欲しいのが「ギリギリまで冷房設定温度を上げてみる」ことです。

一般的に、夏のエアコン稼働時の冷房設定温度として高めの「28度」にすることが推奨されていますが、屋外の気温があまりにも高かったり、また体調によってはこれでも「寒い・寒過ぎる」と感じることがあります。特に冷えやすい女性や冷房病になりやすいタイプの方、高齢者の方に「高め設定の28度でも寒いのだから冷房は嫌、切りたい」と言う方が多いようですが、もしそうであれば一度29度、30度、31度といった設定で稼働させてみていただきたいのです。

すると、ある気温では「暑くもなく寒くもない」と感じられることに気づくと思います。稼働前に比べてそれでも冷えているなら、室内の相対湿度は下がっている事でしょう。そうしたら、ぜひすぐにその時点での客観的数値データを押さえておきましょう。数値を測るのは、平素使っているようなお部屋の温湿度計の数字で構いません。

例えばガイドの場合は、エアコンの設定温度を「29度」にして稼働させたときの室温「28.5度」湿度「45パーセント」で程よく快適に感じることが何度か試すうちに分かりました。この気温、湿度であれば集中して仕事をすることや睡眠に影響なく、また足元が冷えて具合が悪くなる事も避けられるようです。

また、もし同居の家族などが「これでは暑い」と言う場合には、扇風機の併用をお勧めします。風が身体に当たることで、体感的には2度ほど気温が下がったように感じられるようです。

 



エコロジーより命が大事

近年省エネ意識は一般に高まり続けています。導入時には苦情も多かったようですが「クールビズ」はすっかり定着しましたし、「緑のカーテン」や「打ち水」などの導入によって、なるべくエアコンに依存しない、エコロジーな夏のすごし方が広く提唱されています。

けれどもそういった草の根の努力を打ち消すような、太平洋高気圧の強大化など自然の猛威や影響ももちろん大いにあるわけです。どうか、くれぐれも「エコ」を優先して「命」を無駄にするようなことのないように。心や身体を休めるための我が家で、みすみす命を落とすことのないように......。

 


 

この記事の担当ガイド

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家事・掃除・子育て ガイド 

藤原 千秋

 

家の事・子どもの事・仕事の三つ巴を愉しむ三児の母ずぼら掃除を提唱
主に住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして15年のキャリアをもつ。現在は並行して家事サービス、商品開発等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、三児の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など著書、マスコミ出演多数。

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