根菜類は体を温めるってウソ!?

根菜類には土のパワー(陽気)が蓄えられている?

大地にそそがれた陽気を十分に蓄えているのが根菜類だから、=カラダを温める、という考えは非常に薬膳的です。しかも、冷え対策にオススメの血行をよくするビタミンE・C、必要な酸素を全身に運ぶ鉄分なども豊富とくれば、現代栄養学からみても合点がいきます。旬モノなら栄養価も高いのでなおさらです。

しかし、根菜類すべてがそうだとはいえないのが、薬膳の括りにくいところかもしれませんね。というか、ピックアップする根菜類によってカラダに及ぼす寒熱性が異なるので、それも誤解を産む原因のひとつなのかもしれません。



カラダを冷やす根菜類の代表「大根」「ゴボウ」

201601_01.jpgまずは薬膳的にカラダを冷すジャンルに入る代表的な根菜類を2つあげてみます。2000年以上も前から受け継がれている薬膳のスピリットを感じていただけると幸いです。

■「大根」はカラダを涼しくさせ、消化促進によい
唐の時代に書かれた『唐本草(とうほんぞう)』に記載されている大根の効能です。肺と胃に作用して痰をとり、滞った気をおろして胃腸を健やかにする働きもあります。

なお、大根の種子は「ライフクシ」という消化薬です。とくにご飯や麺類などデンプンの分解を促進する働きが高いとされます。

■「ゴボウ」は熱を冷まし、頭痛や喉の痛みによい
6カ国以上の言語で翻訳されている、世界の薬学の名著『本草綱目(ほんぞうこうもく)』によると、ゴボウは「苦味」でカラダを冷す「寒性」と書かれています。

とくに春先に起こりやすい、のどの痛みや頭痛をともなうような熱症状があるカゼによく、ゴボウの種子である「ゴボウシ」はその薬効も高く、解毒作用もあります。



カラダを温める根菜類の代表「生姜」「かぶ」

201601_02.jpgそのほかカラダを温める根菜類には、ユリ科のにんにく、らっきょう、玉ねぎなどがあります。

■「生姜」は寒気を散らし、嘔吐をとめる
現存する最古の薬学書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』を整理した『本草経集注』には、「辛味」「温性」で、寒気のする体表の邪気を取りのぞき、消化機能を高め、嘔吐を止めたり、解毒作用があると記されています。

生姜のカラダボカポカ作用は、薬膳だけでなく栄養学的にも証明されているので、ここで改めて明記はしませんが、そういえば生姜も根菜類だった!と思い出したのはガイドだけでないはずです。見たからにどんなものより「根っこ」なんですけれどね。

■「かぶ」は消化を助け、カラダを温める
『神農本草経』の前後で書かれた『名医別録(めいいべつろく)』では、「温性」で消化促進によく、元気をつける食材とされます。

ここで注目したいのが、大根との違いです。どちらも消化を促進する働きがあるのですが、大根は「涼性」で、かぶは「温性」。なので、薬膳的には冷え性にはかぶ、そうでなければ大根をピックアップするとよりベターです。



身近な食材の寒熱性

文献によって多少の誤差がありますが、一般的に薬膳でいわれている食材の寒熱性をあげてみます。もちろん、食材にはカラダを冷ます・温めるなどの寒熱性だけではなく、水分代謝を高める、便通をよくする、血液を補うなど、寒熱以外の働きを総合的にみることが大切です。

■温熱性の身近な食材
生姜、ねぎ、しそ、香菜、かぶ、かぼちゃ、玉ねぎ、ニラ、菜の花、にんにく、ラッキョウ、もち米、羊肉、鶏肉、イワシ、サンマ、マグロ、海老、ライチ、サクランボ、桃、栗、クルミ、黒砂糖など

■寒涼性の身近な食材
キュウリ、トマト、レタス、ゴボウ、大根、冬瓜、苦瓜、ナス、春菊、セロリ、たけのこ、ホウレンソウ、緑豆もやし、鴨肉、アサリ、シジミ、カニ、昆布、海苔、柿、梨、スイカ、バナナ、茶葉、塩など

■平性の身近な食材
しいたけ、長いも、さつまいも、じゃがいも、にんじん、ピーマン、とうもろこし、キャベツ、オクラ、うるち米、大豆、黒豆、豚肉、牛肉、スズキ、イカ、タコ、梅、ブドウ、ゴマ、ハチミツなど

 




この記事の担当ガイド

guide-50-210-260.gif


漢方・薬膳料理 ガイド 

杏仁 美友

きょうにん みゆ

生活者目線で漢方を追求! 手軽に作れる薬膳レシピのパイオニア

自身の体調不良が漢方で改善できたことを機に、本格的に漢方・薬膳の分野を学んできました。国際中医師・中医薬膳師の資格を活かし、「こころに漢方を、くちびるに薬膳を」をモットーに、身近な食材を使ったカンタン薬膳やわかりやすい漢方の知恵を紹介していきます。

All About