快適な寝室で心地よい眠りを

急激な社会の変化にともない生活のリズムも乱れがちな現代、どうすれば心地よい眠りを得ることができるのでしょうか。心地よい眠りには、心身共にくつろげる環境が大切です。ぐっすり目覚めるためのヒントをご紹介します。

 

睡眠不足の弊害

日本人の4、5人に一人が睡眠に悩みを持っているといわれています。寝つけない、眠りが浅い、寝起きが悪い、夜中に目を覚ましてしまうなど、症状は人によってさまざまです。また、自覚症状がなく気づかないうちに睡眠不足に陥ってしまう人も多く見られます。

睡眠が不足すると、循環機能や免疫機能、脳機能を低下させ、体のリズムを狂わせるなど、健康を損なう原因にもなってしまいます。

人生の三分の一は睡眠時間と言われるように、快適な睡眠は、快適な人生を過ごすことにもつながっています

よい眠りは、スムーズな入眠から

眠りには周期があり、「レム睡眠(体は眠っているのに脳は起きている浅い眠り)」と「ノンレム睡眠(体も脳も眠っている深い眠り)」が、約90分間隔で交互に繰り返されています。特に入眠直後の深いノンレム睡眠は重要で、この時に新陳代謝を促す成長ホルモンが大量に分泌されています。

入眠がスムーズだと、よく眠れたと感じるものですが、この寝つきの良さが質の高い睡眠につながります。時代の変化とともに、年々短くなってきている睡眠時間ですが、大切なことは、その長さよりも質なのです

 

理想的な睡眠はグラフの波がキレイで、かつ朝に向けて浅くなっているのがわかります。また入眠して90分後に浅い眠りのレム睡眠が訪れることから、仮眠は90分程度がよいとされています

{コラムキャッチ}:ライフスタイル

今回の特集にて「心地よい眠りの環境」について教えていただいた山尾碧さん。

{写真}:ライフスタイル

プロフィール
心地よい眠りについて、さまざまな研究を行っているロフテー(株)の「快眠スタジオ」に所属。睡眠に関する最新情報の発信や、睡眠健康教室などの企画・実施を通し、地域社会での健康づくりをすすめている。

快眠につながる温度・湿度、明るさ、音、雰囲気

快適な睡眠を得るためには、室内環境も大きく影響します。快適な眠りを得る寝室の温度は18~22度、湿度は50~60%くらいが目安とされています。また、完全な暗闇よりもある程度の明るさがあった方がよく眠れるといわれています。うるさい音は脳が刺激されるため、なかなか寝つくことができません。インテリアや部屋全体の雰囲気などにも配慮しながら、快適な寝室環境を心がけましょう

■温度・湿度

理想的な室温は夏が25度、冬は15度、湿度は年間を通して50%といわれています。エアコンなどで温度調節をするときは、冷房は25~28度、暖房なら18~22度を目安に設定します。乾燥している場合は保湿器などで湿度を調整します。

 

■光

一般に寝室の明るさは20~30ルクスがよいとされています。おやすみ前の1時間は脳をリラックスさせる暖色系で150ルクス以下の照明に。眠りに入るときは30ルクス以下にして、ゆっくりと眠りに入る環境を調えます。ただし安心して眠りにつくには、自分にとって一番眠りやすいと思える明るさがベストです。

 

■音

生活音の少なくなる夜間は、ちょっとした物音が寝つけない原因に。外部の音が気になる場合は、二重サッシや雨戸、厚手のカーテンなどで防音対策を。高齢になるほど音の影響を受けやすいので、質の高い眠りのために必要な配慮です。

 

■雰囲気

寝室は眠るための場所なので、落ちついた眠りやすい雰囲気作りが大切です。刺激的な色彩は避け、部屋全体のカラーをベージュやブラウンといった暖色系の色合いでまとめると、落ちついた雰囲気になります。

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乾燥してる寝室には、加湿器を使い50~60%の湿度調整をします。

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起床時は外の光を室内にとりこみ、体内時計をリセットさせることで一日のリズムを整えることができます。

1~2時間前からリラックスして寝る準備を

ぐっすり眠ることは、単に疲れを取るということだけではなく、体の状態を整える重要な役割を担っています。自分に合った心地よい環境と入眠習慣を整えて、毎日のリズムを大切にしましょう。

スムーズに眠りにつくためには、眠る1~2時間前から心身をリラックスさせることが大切です。テレビを見たり食事を摂るなどの刺激は避けましょう。心地よい音楽を聴く、ぬるめのお風呂に入る、好きな香りを楽しむなど、自分にあった入眠習慣を身につけることをおすすめします

 

就寝前は静かな音楽や自然の音などで自律神経を静め、心身をリラックスさせる工夫をします。

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からだを温めてリラックスすることで快適な入眠を促します。カフェインの含まれていないハーブティーは香りにもリラックス効果があり、ひのきやカモミールの香りは、神経の緊張を和らげ心地よい眠りを誘ってくれます。

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就寝1~2時間前に38~40度くらいのぬるめのお湯に時間をかけて入ります。入浴後15~20分がベッドに入るベストタイミングです。その後の夜更かし効果半減です。アロマバスや入浴剤もリラックス効果を高めます。

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立ってる姿勢がいい姿勢

寝ている姿勢も快眠のための大きなポイントです。体に一番負担のない姿勢はリラックスして立っているような状態といわれます。この時、顔の角度は約5度になりますが、眠っている時もこの状態を保てることが理想的です。この角度を保つための寝具が枕で、頚部を無理なく支えながら布団と頭部・頚部の間にできる隙間をうめる役割を持っています

 

枕選びは快眠の秘訣

枕選びのポイントは3つあります。1つ目は高さ。体型や首のカーブの深さに合わせて選びましょう。高さが合わないとイビキや肩凝りの原因になることもあります。2つ目は形です。後頭部のおさまりを良くするために中央部が低め、寝返りで横向きになる時のために両サイドがやや高めの枕が理想的です。そして3つ目が素材です。羽や綿などの柔らかい素材から、そばがらやポリエチレンなどの硬い素材まで多彩です。自分のお好みで選んでください。

■高さをチェック

頭部・頸部と敷きふとんの間の隙間をうめ、リラックスした寝姿勢を保つのが枕の使命。頸椎に負担のかからない高さのものを選びましょう。

 

■寝姿でチェック

横向きで寝ている時には肩幅を考慮した高さが必要です。両サイドが少し高くなっているのが理想。

 

■感触をチェック

枕の中身はいろいろ。それぞれに特徴があり、どれが一番ということはありません。お手入れの頻度やアレルギーの有無を考慮して、お好みの素材を選びましょう。

 

寝ている姿勢も快眠のための大きなポイントです。体に一番負担のない姿勢はリラックスして立っているような状態といわれます。このとき顔の角度は約5度になりますが、眠っている時もこの状態を保てることが理想的です。この角度を保つための寝具が枕で、頚部を無理なく支えながら布団と頭部・頚部の間にできる隙間をうめる役割を持っています。

{写真}:ライフスタイル

快眠をサポートする睡眠グッズたち

睡眠不足を感じる人が多くなってきているからでしょうか、最近は、頭部に当てる枕以外にもさまざまな種類の睡眠グッズが開発されています。疲れをとる、リラックスできるなど、自分の眠りのスタイルにあったものを選んでみませんか。

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運動工学に基づいて設計され、低反発のウレタン素材は筋肉や頚椎にやさしい感触を与えます。また寝返りに対応した形状が特徴です。

 

 

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横向きに寝た時に身体への負担を軽減するよう工夫された枕です。寝姿勢や好みよって形や素材が選べます。

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疲れた足をじんわり癒す枕です。足の指を開く足指枕、足裏を刺激する枕などもあります。

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横向きに寝る人のための枕です。両サイドをやや高くし、耳の当たる部分にくぼみを作っています。

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机を使って仮眠ができる枕、パソコン作業を快適にする腕用の枕などオフィスの環境にあった枕が増えています。

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枕の片側でやわらかな灯りが点滅します。そのリズムが穏やかな眠りを誘います。

枕の中に入っている素材は、硬めのものと柔らかめのものに大きく分けられます。硬めのものでは、吸湿性の高い「そばがら」や香りがリラックス効果をもたらす「ヒノキチップ」などの天然素材系のものと通気性がよく埃や虫の心配がない「ポリエチレン」などの化学素材系のものがあります。「ポリエチレン」は形によって感触が少し変わってきます。

柔らかめのものでは、吸湿性と放湿性に優れた「羽根」や「キャメル(らくだの毛)」、クッション性に優れた「低反発ウレタンフォーム」、ふんわりと柔らかな感触の「ポリエステル綿」などが代表的な素材です。枕を決める場合には、素材の種類や感触を確かめることも大切です。

{写真}:ライフスタイル

※資料提供/ロフティー(株) 快眠スタジオ

最近ぐっすり寝た気がしない、寝付きが悪い、目覚めが良くないという方へおすすめの一冊をご紹介します。心の緊張を解いて、安らかで深い睡眠をどうぞ。

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

電車で寝るのは日本人の特性? ソファでごろ寝ってどうして気持ちいいの? 人が眠る場所、現代の「寝床」はさまざまです。心地よい生活のための睡眠環境について、いろいろな角度から考えていきます。

{本の紹介}

睡眠文化研究所編集
ポプラ社
1,365円(税込)

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

生活習慣、ストレス、体の不調、寝室の環境‥‥。不眠は、さまざまな要因が絡みあっています。豊富なカウンセリング体験をもつ心療内科医が指摘する、不眠の意外な原因とは? その解消策とは? 心地よい目覚めと充足感を取りもどすための現代人必読の書です。

{本の紹介}

藤田英親(著)
河出書房新社
1,365円(税込)

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

眠りに適した環境や寝具の選び方、室内環境、簡単エクササイズや眠りを誘う食べ物など、質のよい睡眠をとるために手軽にできる快眠法を写真やイラストで多数紹介。快眠セラピストが、眠りのテクニックから"こころのあり方"まで伝授します。

{本の紹介}

三橋美穂(講師) 
内山真(監修)
日本放送出版協会
630円(税込)

{本の紹介}{見出し:ライフスタイル本の紹介}

ろうそくの炎が揺らぎのリズムで心を落ち着かせ、心地よく眠りに入る手助けに。「快適性評価の専門家」が脳波を測定し、心地よく眠るための確かな効果を実証。科学的データに基づき誕生した眠りに誘う写真集。ロフテー快眠スタジオの快眠サポート情報も掲載。

{本の紹介}

吉田倫幸(著)
ワニブックス
1,365円(税込)