動脈硬化の予防に役立つ?明らかになったカレーの効果

カレーはおいしいだけじゃない!

201410【食と健康】カレー.jpgブログやSNSでも、お店のランキングや新店の発掘情報、新メニューなど常に話題はことかかないカレーですが、おいしさだけでなく、近年は健康への有効性についても注目されています。

例えば、スパイスの一つである「ウコン」に含まれる、色素成分の「クルクミン」の抗酸化作用が、認知症や糖尿病などの予防に役立つ可能性があることなどがこれまでも研究されてきました。

2014年7月、新たにカレーが動脈硬化予防にも役立つ可能性があるのではないかという研究報告(ハウス食品グループ本社株式会社)がありました。

先に述べたように、個々のスパイスの抗酸化作用についてはすでに研究されていますが、今回の研究報告は「カレー」という料理についての効果を確認をしたもので、意味深いことだと思います。

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同社では、まずパスタや野菜炒め、唐揚げなどの12種類の食品で比較し、1食当たりでは市販カレーの抗酸化力(ORAC値)が高いことを確認しました。 

血流を改善し、動脈硬化予防に役立つかも?

動脈硬化は心疾患や脳疾患の原因となり、また脳疾患の後遺症では寝たきりや麻痺等が残ることから、健康寿命を延ばすためには動脈硬化予防が重要な課題です。

同社の研究では、血液の流れを良くし、血管を柔軟に保つことで動脈硬化を予防する血管内皮の機能に注目。血管内皮機能が正常であれば、血管が柔軟に拡張して血流がよくなると言われています。また、食後の血糖値の上昇により酸化ストレスが生じることで血管内皮機能が低下すると、動脈硬化が発生したり、悪化すると考えられています。

今回の研究では、健康な男性(平均年齢45歳)14名が、180gのレトルトカレーまたはスパイスを含まないコントロール食品を200gの米飯と併せて摂取し(計約500kcal)、摂取前後で血管内皮機能を比較した結果、カレーを食べることによって、酸化ストレスによると考えられる食後の血管内皮機能低下が改善することを確認されました(第46回日本動脈硬化学会総会・学術集会にて発表)。

       201410【食と健康】グラフ②.jpgデータ提供/ハウス食品グループ本社株式会社 

リリースでは、次のようにまとめています。

酸化ストレスの増大によると考えられる食後の血管内皮機能低下が、カレー摂取後では見られず、 血管内皮機能が改善することが分かりました。血管内皮機能傷害は脳卒中や心筋梗塞といった動脈硬化疾患の原因になることが知られており、カレーの摂取は健常人の心血管の健康に役立つ可能性が考えられます。今後は、カレーの血管内皮機能改善効果のメカニズム解明等を行いたいと考えています。

 私たちが家庭でまたは外食でカレーを楽しむ際、種類は豊富にあります。そのため今回使われたカレーの内容や、レトルトとルゥ、カレー粉、具材などが変わることでの影響について、ハウス食品グループ本社株式会社に問い合わせてみました。

今回の実験では具材のばらつきを減らすため「キーマカレー」(レトルト)を使用されましたが、今回明らかになった効果は具材に起因するものではなありません。スパイスは、種類の少ないシンプルな配合で、一般的なカレー粉同様のものが使用されていました。

またレトルトでは加熱により抗酸化作用が減少する可能性もありますが、「レトルト」で効果があるのなら、他のタイプのカレーでも効果があるだろうと考えられます。

こうしたことから、具材は変わっても、一般的なカレー粉の配合であれば、同様の効果が期待できると考えられるというコメントをいただきました。
*ただし、自家製配合のスパイスで作るカレーについては、定かではありません。

夏にカレーがおすすめなワケ

脳卒中には、脳の血管が破れる「脳出血」と、脳の血管が詰まる「脳梗塞」があります。脳卒中は寒い冬に多いのですが、脳梗塞は夏(6~8月)にも多く発生しています(国立循環器病研究センター)。というのは、汗をよくかくことで体内が脱水症状に陥ると、血流が悪くなったり、血栓ができやすくなるなど、いくつかの要因が重なって脳梗塞が発症しやすい傾向があるのです。

201410【食と健康】カレー②.jpg暑い時期にカレーをいただくことは、食欲増進や夏バテ防止、そして血流の改善に役立つかもしれません。

辛味のトウガラシやショウガなどが食欲を促し、ごはんやナンと食べればエネルギー源の糖質も摂れます。また、基本的に肉やタマネギ 等は使いますから、タンパク質や脂質、 ビタミンB群などが含まれています。

食品成分表で見ると、カレーはビタミンEやビタミンC、カルシウム、亜鉛等のミネラル等の含有量は少ないようです。どんな具材のカレーを選ぶかでも異なりますので、1皿で簡潔するなら、できれば夏野菜などをたっぷり使ったカレー、ごはんなら玄米や雑穀入りをチョイスしたり、ナッツや豆類などがプラスされると、足りないビタミンやミネラルなども摂取することができます。

もちろん、健康の基本色はバランスよく食べることであり、カレーはあくまで食品ですから病気を治すなど過度の期待はできません。またおいしいから、健康によいからとといって食べ過ぎたり、カレーばかり食べ続けては栄養が偏ることもありますので、多様な食事をとる中で楽しむように心がけましょう。

またカレーはとろみがありあまり噛まなくても飲み込めます。意識してよく噛んだり、お店で選ぶ時や自分で作る時には具材を大きめにするのもよいですね。

他にも、カレーによるストレス抑制効果の報告や、カレーによく使用されるショウガやカルダモン、胡椒、クミンなどのスパイスを調合したものをラットに与えたところ血圧を下げる効果が認められる等、カレーという料理の作用には、今後の研究にますます期待が寄せられています。

協力/
ハウス食品グループ本社株式会社

参考/
カレーの血管内皮機能改善効果を確認(ハウス食品グループ本社株式会社)
・調理加工食品類ビーフ、レトルトパウチ(食品成分データベース/文部科学省)
・脳梗塞件数(国立循環器病研究センター)

 

この記事の担当ガイド

201410【食と健康】担当者南恵子ー.jpg南 恵子 

 

 

 

NR・サプリメントアドバイザー、フードコーディネーター、日本茶インストラクターなどの資格取得。現在、食と健康アドバイザーとして、健康と環境に配慮した食生活の提案、レシピ提供、執筆、講演、商品企画アドバイスを中心に活動。毎日の健康管理に欠かせない食に関する豊富な情報を発信していきます。