実は今、日本の住宅政策は大きな過渡期を迎えております。
住生活基本法や長期優良住宅などに代表されるように、ここ数年は『いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う』社会への移行が進んでおります。
その理由は、冒頭の質問の答えに起因しています。
日本の空き家は全国に約756万戸存在しています。
日本全国にある総住宅数が約5,759万戸ですので、実に13.1%もの割合を占めております。
つまり8軒に1軒は空き家なのです。
これは平成20年の調査結果ですので、現在ではもっと増えていることでしょう。
ご存知の通り、既に日本では人口の減少が始まっております。
家が大量に余っている中で住む人は徐々に減っていく。
政府が危機感を持ってストック社会への移行を始めたのもこのような背景があります。
【表1】を見れば一目瞭然ですが、日本の住宅の寿命は欧米よりも短く、残念ながら築30年前後のまだまだ住める家が壊されております。そのためか【表2】のように、中古住宅の流通量も極端に少ない状況にあります。
もちろん、建物構造や風土の違いといった要因もあります。
ですが、一番の違いは文化の違いです。
売却時に、建物の性能やお手入れの費用などをしっかりと評価する欧米に対して、日本では建物の価値がほとんど評価されず、土地の価値のみで取引されてしまうのです。
なぜなら、土地神話が根強く残る日本では、"建物は土地の付属品"という考えが定着しているから。
建物の価値は、わずか築20年前後で価値0円として扱われることが一般的です。
『土地付き中古住宅』ではなく『古家付き土地』として売買される中古住宅は、購入と同時に取り壊されてしまうのです。
つまり、日本の住宅は"耐久消費財"ではなく"消耗品"だったのです。
これでは『お手入れして長く大事に住もう』という習慣は根付きませんね。
この慣習を変えようと立ち上がったのが、ハウスメーカー10社で運営する"優良ストック住宅推進協議会"です。
前述の"築20年前後で建物価値0円"という考え方は、高い耐久性を売りにしているハウスメーカー住宅や、建替えありきで作られたローコスト住宅にも、同じように適用されてきました。
もちろん、ハウスメーカー住宅は中古でも人気がありますので、+αの価値を付けて流通されてきましたが、それは明確な規定も基準も無い、いわゆるドンブリ勘定での査定でした。
これではいけない。
ハウスメーカー住宅は築20年で価値がなくなるような建物ではないし、お手入れさえすれば何十年でも住み続けることが出来る。
ミサワホームを信頼して良い建物を購入してくださったオーナー様が、売却時に損をしてしまう制度ではダメなのです。
そこで、【表3】の条件を満たした自社の良質な中古住宅を"スムストック"とブランド化し、建物価値を正しく評価して中古市場に流通させよう、という取り組みを始めました。
これは、国土交通省も注目している新しい取り組みです。
具体的な査定方法はここでは説明し切れませんので省きますが、簡潔にまとめると【表4】のようになります。
特徴的な部分としては、以下の4点です。
・査定ルールを明確にして、誰が査定しても価格に差異が出ないようにする
・劣化スピードの違う構造躯体と内装設備を分けて査定し、建物の正確な価値を算出する
・建物の価値が分かるように、土地と分けて価格表示する
・リフォーム履歴も評価対象とする(ただしお手入れが行き届いていない場合は減額)
今までウヤムヤにされてきた建物価値にスポットをあて、築年数が経った建物でもしっかり評価・表示が出来るようにしました。
建物価値がしっかりと評価されれば、"お手入れして長く大切に使う"文化が根付き、建物の寿命ももっと長くなるでしょう。
そして、住宅購入を考えている方に、中古住宅と言う新しい選択肢が増えることでしょう。
『いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う』住宅ストック社会への第一歩です。
今、日本の住宅政策は大きな過渡期を迎えております。
しかしながら、その道は長く険しく、まだまだ課題は山積しております。
我々ハウスメーカーが、不動産流通会社が、建物の検査・保証会社が、そして政府が、さまざまな取り組みを積極的に推進していかなくてはならないでしょう。
お住まいを売却されるオーナー様も、そのお住まいを新しく購入するお客様も、安心して納得のいく取引が出来るように、これからも頑張りますので、ぜひ温かい目で応援してくださいね。
(不動産担当:福島)